江川崎駅の駅員が考えた日本初の
観光トロッコ列車
高知県四万十町と愛媛県宇和島市を結ぶ「予土線」。高知県側には10の駅があり、いずれの駅も四万十川に沿って設置されていることが特徴だ。
通学や新聞輸送など、かつては沿線の生活に欠かせない役割を担っていたが、人口減少や交通手段の変化を受けて、運行本数も減少。そのため駅を訪れると、街の喧騒がまるで嘘のように感じられるほど、静かでゆったりとした時間が流れている。四万十川のせせらぎや鳥のさえずりが聞こえる無人駅は、不思議と心休まる場所だ。
そんな予土線から誕生したのが、日本初の観光トロッコ列車。かつて江川崎駅に勤めていた駅員が、「北海道で使 われなくなった貨物列車を利用して、沿線の魅力を観光に生かしたい」と考え、当時の国鉄本社に企画を持ち込み、昭和59年に走り出したのが「清流しまんと号」、現在の「しまんトロッコ」だ。
今では、予土線の駅の利用者の多くが観光客。しまんトロッコのボランティアガイドである中脇さんは、観光客に美しい景観をはじめ、地域に根付く文化や営みなど、駅から広がる地域の魅力を伝えている。
予土線しまんトロッコ 車窓ガイドグループ 四万十ART/中脇 由美(なかわき よしみ)さん
「予土線では地元住民との交流という素敵なお土産もできますよ♪ ぜひお越しくださいね。」
打井川(うついかわ)駅
四万十川が流れる渓谷にぽつんと佇む無人駅
駅名の由来は、四万十川に流れ込む支流・打井川がすぐそばを流れていることから。高い斜面地にあり、長い階段でアプローチされたホームからは、美しい四万十川の眺めを楽しむこともできる。春には見事な桜並木が広がるという。
江川崎(えかわさき)駅
長い列車旅にひと息つける駅 県境越えの準備を
昭和49年に予土線が全線開通するまでは、愛媛県側からのみ、列車で訪れることができる終着駅だった。トロッコ列車の乗客のために長時間休憩がある駅でもあり、トイレ休憩や列車の撮影ができる。
写真:坪内政美
車窓から地域を楽しめるのが観光列車の醍醐味だ。