つないでつむいで 県史編さん室

高知県史(自治体史)とは?

高知県について伝え残されたさまざまな資料を調査し、本県の歴史を詳細に記したもの。郷土の歴史を知る、大切な手がかりだ。

県史の講演会を 開催していきます!

狐の窓

江戸時代、妖怪の正体を「みやぶる」手段として、歌川国丸が描いた「狐の窓」等が掲載されている『新版化物念代記』 (文政2年(1819年)版)。

『狐の窓』中身

「狐の窓」とは、指の隙間から覗くことで、化け物の正体を見破ることができるおまじない。 ※国立国会図書館ウェブサイトから転載

高知県の民俗の魅力を 県民の皆さんに伝えるため
講演会を開催!

今後20年かけて、新たな高知県史をつむぐ役割を担う「県史編さん室」。さらに、高知県の歴史をつなぐ人材の育成や、歴史文化の振興にもつなげるため、高知県の歴史の魅力を伝える講演会も開催している。  

令和4年7月には、その第一回目となる民俗部会の講演会を開催。登壇者の一人である常光徹氏(国立歴史民俗博物館名誉教授)は、「地震の予兆とまじない」をテーマに講演した。嘉永7年(安政元年、1854年)の「安政南海地震」と、さらに昭和21年の「昭和南海地震」のいずれでも、県内各地でたくさんの人々が「カアカア」と叫ぶまじないが伝えられていること等を紹介。土佐に住む人々が繰り返し直面してきた巨大地震の伝承をたどっていった。

常光さん

高知県史 民俗部会長/常光徹氏 

もし妖怪に出会ったら? 伝承から学ぶ対処方法

さらに常光氏は、「妖怪と遭遇した」という伝承の数々を取り上げながら、「おどかす」「あたえる」「みやぶる」「だます」「ふせぐ」の五つに分類し、各地で編み出されてきた怪異への対処方法について解説した。

例えば、都市伝説となった「口裂け女」では、「ポマードと三回唱え、おどかす」「好物のべっこう飴をあたえる」「『私きれい?』と聞いてくる彼女に『まあまあです』と答えて困惑させ、すきをみて逃げる」等、さまざまな対策が当時の子どもたちの間で伝えられていた。  

高知県にも、まだまだ多くのまじない文化がある。そこに読み取れる人間の心意は、きっと共感を誘うことだろう。

史料が語るもの語
第二回 真覚寺

高知県土佐市にある漁師町、宇佐町。ここには、古来繰り返し襲ってきた、巨大津波の記録が多く残されている。今回は、災害を生き延びた僧侶による、後世への貴重なメッセージを読み解いていく。

『地震日記』1巻

津波についての一節(『地震日記』1巻)

「安政南海地震」の碑

真覚寺にある「安政南海地震」の碑

幕末の住職が残した 南海地震と復興の記録

江戸時代末期に発生した「安政南海地震」を生き延びた後、その甚大な被害をはじめ、やがて明治維新に至るまでの復興の様子や、当時の社会の変化を、およそ15年にわたって記録し続けた人物がいる。土佐市宇佐町にある「真覚寺」の僧侶、静照だ。

彼の『真覚寺日記』の『地震日記』には、「津波が迫り来る音を耳にしたとき、欲を捨ててすぐに逃げた者は皆助かったが、財産を惜しんで逃げ遅れた者は、波にのまれた」という一節(右上写真参照)がある。このような南海トラフ地震を生き抜く教訓のほか、激動の時代を生きる現代人への鋭い示唆が散りばめられている。