つないでつむいで 県史編さん室

高知県史(自治体史)とは?

高知県について伝え残されたさまざまな資料を調査し、本県の歴史を詳細に記したもの。郷土の歴史を知る、大切な手がかりだ。

県史編纂津野町芳生野での暮らしや祭礼について語る吉門豊子さん。

旧土佐山村(高知市)資料所在調査の様子。筒井委員(近代部会)。

県史連載-写真02文書の内容について説明する編さん室職員。

編さん室職員も 調査活動を実施

新たな高知県史の事業では、時代や分野ごとの各専門部会委員が精力的に資料調査を進めているが、編さん室職員もさまざまな調査に従事している。今回はそのうち「予備調査」と「資料所在調査」をご紹介したい。  予備調査は、専門部会による調査が予定される地域に赴き、資料の保管状況の確認、調査先の担当者、資料所蔵者、聞き書き調査の話者との調整などを行う。例えば令和5年12月には、津野町で戦国時代の文書の予備調査を実施。現地で所蔵者の吉門豊子さんから史料確認と聞き取りを行った。70年近く津野町で暮らす吉門さんからは、文書のみならず、山の生活や神社の祭礼など、現代史や民俗に関する話もたくさん聞かせていただいた。得られた情報は関係部会の委員に共有され、新たな調査につなげていく。

県内に所在する資料の 情報を収集

委員や職員が資料調査を実施するとき、まずは各々の資料について、誰が所有し、どこで保管され、どのような状態であるか、包括的な所在情報が欠かせない。これを行うのが資料所在調査だ。前回の県史やそれぞれの市町村史で確認・利用された資料を始め、各地の資料館や図書館、学校、団体・個人が所蔵している資料などを対象に、すべての市町村を訪問して、関係者への聞き取りや現況確認などにより、全体状況の把握を進めている。  例えば、令和6年1月の旧土佐山村(高知市)の調査では、旧役場庁舎などの行政資料を調査。同村で盛んであった、戦後の社会教育に関する資料が確認できた。  残念ながら過去に確認された資料が今は所在不明であったり破棄された事例も多いが、新たな発見も続いている。所在調査には、各地域の貴重な歴史資料を将来に伝え残すための、基礎情報の役割も期待される。


史料が語るもの語 第八回
歴史民俗文化の里 権谷せせらぎ交流館

四万十市西土佐地区の「旧権谷(ごんだに)小学校」の校舎を活用した「権谷せせらぎ交流館」。ここでは、民具などの生活資料を始め、戦時中の満州移民と引揚げ、そして「慰霊の旅」などの記録が受け継がれている。

昭和二十一年十月十六日 更生会規約 江川崎村海外引揚民更生会

令和5年8月現代部会 体験者の方への聞き取り調査

故郷に帰ってきた引揚者と 戦後のくらし

戦時下の国策として知られる満州移民は、「分村」という集団移住の形で進められたことが多く、敗戦時の混乱により、多くの人たちが亡くなった。幸い故郷に帰ることができた引揚者も、戦後のくらしは苦難に満ちており、現代部会では体験者の方に聞き取りを行っている。  権谷せせらぎ交流館には多くの史料が保存・展示されており、写真の史料は、引揚者が相互扶助のために自ら組織した引揚民更生会の規約である。引揚者の連絡、就職・就農あっせん、役場への陳情など引揚者の生活再建にとって大きな役割を担っていたことが読み取れる。  戦争や移民は地域に何をもたらしたのか、史料と対話しつつ考えていきたい。