つないでつむいで 県史編さん室

高知県史(自治体史)とは?

高知県について伝え残されたさまざまな資料を調査し、本県の歴史を詳細に記したもの。郷土の歴史を知る、大切な手がかりだ。

特定歴史公文書等高知県立公文書館の書庫に収蔵されている 「特定歴史公文書等」は、県の現代史が記録された 重要な文書であり、県史編さんにも活用される。

高知県立公文書館・研修室で説明を受ける高知県立公文書館・研修室で説明を受ける。

専門部会の取り組みを 紹介します!

県民の歴史をつむぐ旅 現代部会がスタート

高知県の歴史をつむぐ県史編さん事業には、さまざまな専門部会がある。令和5年4月にスタートした現代部会は、戦後の高知県のあゆみについての歴史をつむいでいく。まだ当事者の多くが健在であり、人々の記憶にも新しいため、「歴史」と聞いてもピンとこないかもしれない。ただ、人々の生活の営みのすべてが高知県の現代史である。  高知県から海を渡り海外に移住した人々の思い、本県の漁船を巻き込んだビキニ環礁被曝、過疎化が進む中での中山間地域の医療など、人々の記憶をしっかりと後世に残すことが、現代部会の使命だ。  現代編は、前回の県史( 昭和43年〜53年にかけて発行)では刊行されておらず、これまで知られていない話もたくさんあるはず。  戦後からの膨大な資料の山、人々の記憶の深い海を探る。現代部会の長い旅が始まった。

数万年の土佐の歴史を ひもとく古代・中世部会

一方、古代・中世部会が対象とするのは、日本列島で人類が活動し始めたといわれる旧石器時代から、長宗我部氏が土佐国を治めた戦国・安土桃山時代まで。数万年にわたる歴史をどのようにつむぐのか、史料調査が始まっている。  残っている史料が豊富な江戸時代以降と異なり、この時代の古文書・古記録は圧倒的に少ない。中世の石造物などに刻まれた文字(金石文)、古代の木簡や墨書土器も、重要な文字史料となる。考古学の調査成果も、積極的に取り入れる必要がある。  目玉のひとつが長宗我部氏関連の史料調査。近年発見された石谷家(いしがいけ・長宗我部元親の正室の実家)文書をはじめ、新出・既存の史料を体系的・網羅的にデータ収集する計画だ。新たに描き出される古代・中世の土佐の歴史に期待してほしい。

高知県立歴史民俗資料館・長宗我部展示室高知県立歴史民俗資料館・長宗我部展示室


第五回 中土佐町 鎌田港
史料が語るもの語

一本釣り、延縄(はえなわ)、材木の積み出し—。中土佐町の港は、多種多様な仕事と生活の舞台となってきた。そんな港のひとつ、久礼の鎌田港に残されていた民具資料の数々から、かつての人々の営みを解き明かすヒントが見つかりそうだ。

中土佐町鎌田港での民具調査の様子明治33年に発行された「月報」第23号

保管されていた木造船保管されていた木造船

郷土研究家が収集した 民具を調査

中土佐町久礼の鎌田港に所在する倉庫には、郷土研究家として活躍していた故・林勇作(はやしゆうさく)氏と中土佐町教育委員会が町内から収集した民具資料が保管されている。その全容はこれまで十分に明らかにされていなかったが、令和5年3月に民俗部会による調査が実施された。  県内外の研究者・大学生も参加した調査で確認された民具は、漁具にとどまらず、農具や林業の道具、生活用具など多種多様。木造船をはじめとした大型の資料の数々は、広い保管場所があったからこそ残されていたものといえる。これらは中土佐町の生活文化を幅広く解き明かしていくための、重要なヒントとなるだろう。  今回確認できた民具は470点にのぼるが、それでもまだ全体の一部にとどまる。今後さらなる調査の進展が注目される。

民具資料が保管 されている倉庫 (中土佐町)民具資料が保管 されている倉庫 (中土佐町)