つないでつむいで 県史編さん室

高知県史(自治体史)とは?

高知県について伝え残されたさまざまな資料を調査し、本県の歴史を詳細に記したもの。郷土の歴史を知る、大切な手がかりだ。

専門部会による 聞き取り調査が進んでいます!

現代部会と民俗部会 専門分野を横断して 聞き取り調査を実施

高知県の歴史はもちろん、民俗や考古など、さまざまな視点から高知県の歩みを記録する高知県史の取り組み。その編さん過程では、専門分野を横断する学際的な視点が欠かせない。 令和5年2月 日、県立高知城歴史博物館で、土佐伝統食研究会の代表・松崎淳子さんへの聞き取り調査に当たったのは、「現代部会」と「民俗部会」。どちらの専門部会も、文字と紙で残された資料だけでなく、今を生きる人々に聞き取り調査を行うことで、地域の歴史や文化を明らかにするという共通点がある。  今回の調査でも、戦後の早い時期から教育者、研究者として精力的に活動する松崎さんが見つめてきた高知の暮らしや食卓の変化など、両部会の専門性を生かした聞き取りが行われた。

ひとりひとりの人生が紡ぐ高知県史

昭和20年3月に県立女子医学専門学校(高知県立大学の前身)に合格した松崎さん。同年7月に開校式と入学式を迎える予定が、直前の空襲で校舎が焼失。8月に急遽開校された佐川町の仮校舎で医学生の一年目を過ごした。県立高知女子大学で教鞭を執るようになってからは、「大学は花嫁修業の場ではない」と、卒業生全員の就職を目指した指導に取り組んだ。  大学教授を退官後も、「田舎寿司」や「つがに汁」といった伝統食の研究と紹介を続け、「自分が紹介した伝統食を楽しんでくれる若い方がいることが、何よりも嬉しい」と語る松崎さんは、まさに高知の生き字引きと言えるだろう。  このような聞き取り調査で、高知を知る人々の大切な記憶を記録し、その思いを後世へと繋いでゆく。新しい高知県史を作り上げるのは、ひとりひとりの人生なのだ。

土佐伝統食研究会 代表 松崎淳子さん


第四回 高知市 高知商工会議所
史料が語るもの語

高知市中心部が灰じんに帰した大戦末期の高知空襲。施設や人家が焼失した中、高知城天守や現高知追手前高等学校本館とともに、奇跡的に被害を免れた高知商工会議所には、高知県の近代史をひもとく重要な資料が継承されている。

明治33年に発行された「月報」第23号

高知商工会議所の資料を調査する近代部会委員

高知県経済を映す鏡 商工会議所の月報類

高知商工会議所(現在の高知商工会館は戦後に再建されたもの)には、同所が発行してきた明治中期以降の月報類が、ほぼ完全に残されている。  例えば、明治22年の『月報』第23号には、浦戸港から国内外に出荷された県産品(当時の主要商品は紙類、鰹節、生糸など)の出荷額や、高知市で取引されている穀物の価格などの各種統計とともに、国内外の政治状況も掲載され、当時の商工業者にとって、とても重要な情報源だったことが伝わってくる。  これらの月報類は、新たな高知県史を編さんしていく上で重要な手掛かりとなることはもちろん、時代の流れに沿った県民生活の向上や産業の発展の過程を私たちに実感させてくれる。

高知商工会館 (高知市)