慰労と感謝の念を込めた供養祭
人形供養祭
●鏡川みどりの広場 ●5月11日(火)※12日の人形供養は関係者のみで執り行う
役目を終えた人形やぬいぐるみを供養する日本独自の文化として古くから根付いており、その歴史は室町時代までさかのぼる。現在も全国各地のお寺や神社で行われている。
役目を終えた物に 感謝の意を
毎年5月の端午の節句が過ぎた頃、高知市の「鏡川みどりの広場」には、トラック2台分にも及ぶ多くの人形やぬいぐるみが集まる。一見すると異様ともいえる、この光景。訪れる人は皆、感謝の意を表し、人形やぬいぐるみを預けて立ち去っていく。こちらの行事は、今年で26回を迎える「人形供養祭」。県内の若手神職が所属する「高知県神道青年会」が、社会貢献のために何かできることはないかと考えている時に、「長年心を和ませてくれた人形を破棄するのは忍びない」「畏れの気持ちから粗末に扱うことができない」という地域住民の思いを聞き、始まった。子どもが成長して飾らなくなったひな人形や不要になったぬいぐるみなどを預かり、翌日、高知県神社庁でおはらいをし、人形に宿る魂が安らかに浄化できるように思いを込めてたき上げる。こうして、炎とともに空に上がった魂にお別れをするのだ。「人形供養祭」は、日本独自の「全ての物に魂が宿る」という考えが反映された、日本人らしい行事といっても過言ではないだろう。
人形供養祭と 高知県神道青年会
「大事にしていた人形を粗末にできないという皆さまの優しい思いをくみ、安らかに浄化するようにと思いを込めて供養しています」、そう話すのは高知県神道青年会会長の甲藤壽一さん。毎年300件以上の持ち込みがあるという高知県神道青年会主催の「人形供養祭」は、目的の一つに「明日の郷土を担う子どもたちの健やかな成長」を掲げている。そのため、供養料の一部を児童施設に支援基金として贈呈し、昨年は子ども食堂の運営に使われた。子どもの成長に寄り添い続けてきた、かけがえのない存在だからこそ、冥福を祈念して見送りの時を迎えてはどうだろうか。
江戸時代から続く子どもたちの祭り
前浜のエンコウ祭り
●大湊公園周辺 ●6月5日(土)※令和3年の開催は未定
他県のかっぱに相当する水の妖怪「エンコウ」を祭り、水難事故防止を祈念するお祭り。平成23年3月に国の記録作成の措置を講ずべき無形の民俗文化財に指定されている。
古くから 言い伝えられる妖怪
毎年6月の第1週目の土曜、南国市の「大湊公園」では、水難事故防止を祈念する「エンコウ祭り」が開催される。エンコウとはかっぱを表す言葉。この地域では古くから「こんな(夕暮れや大水の)時に川へ行きよったらエンコウに川へ引っぱり込まれるぞ」と言い伝えが残されており、現在も近隣の保育園で紙芝居を通じて子どもたちに語り継がれている。この祭りのルーツをたどれば、江戸時代までさかのぼるという説もあるが、実はそれも定かではない。というのも「エンコウ祭り」の主役であり、主体となって動くのは子どもたち。つまり文献としての記録があまり残っておらず、先輩の背中を見て後輩たちに受け継がれていったのだった。
地域性を培う伝統文化
「祭りの準備は1ヶ月も前から始まる。なんせ子どもたちだけで準備するから、2・3日じゃ間に合わん」、そう話すのは幼少期に祭りを楽しみにし、現在は実行委員長を務める髙木貞夫さん。最年長の「大将」を中心に小学生から中学生までの子どもたちが、夕暮れ時から一軒一軒家を回り寄付を募り、川沿いの雑草を刈り清掃活動を行ったり、背丈を越すほど伸びたショウブを取ったり、さらにろうそくに火をともしちょうちんの設置までを行い、準備に明け暮れる。祭り当日は集めたショウブでエンコウを祭るお社を作り、好物のキュウリの酢もみやお神酒を供えて水難事故防止を祈念する。そして、日が暮れた頃に集めた寄付金で購入した花火を大将から子どもたちに配り、華やかな光景と子どもの笑い声で祭りの幕を閉じる。 昨今では地域の少子高齢化に伴い、大人たちも準備に携わり、小学生のイラスト展示など新たな試みも行われている。「江戸時代から続く歴史ある祭りを無くしてしまうのはもったいない。昔との様式に違いはあれど、これからも祭りを長く続けていき、文化を継承していきたい」と髙木さんは話してくれた。