ここに人あり、自由あり!

土佐の「おきゃく」

●高知市中心商店街ほか
●2019年3月2日(土)〜10日(日)

自由すぎる 土佐の春祭り

春の訪れが待ち遠しい3月初旬の9日間、美味い酒、美味い料理を携え「土佐のおきゃく」は開催される。酒どころ・土佐にふさわしい、高知のアイデンティティ「お客」のような祭り。商店街や公園には畳が敷かれ、列車や路面電車までがおきゃく仕様。県外からは各界の著名人を招き入れ、見知らぬ同士も酒を酌み交わす。その自由過ぎる祭りは、すっかり高知を代表する春のお祭りとして根付いた。

「お客」を現代に 今一度…

そんな「土佐のおきゃく」が芽吹いたのは2006年。口火を切ったのは、高知の食を考える会の会長を務める岡内啓明さん。彼こそが記念すべき「土佐のおきゃく」第1回の実行委員長である。「冬の閑散期を盛り上げるため、夏のよさこいに匹敵する春のお祭りをつくろう」と、土佐経済同友会と一致団結。「流々と受け継がれてきた個々の祭りをまとめて一緒にすることで、『1+1』が『3』にも『5』にもなる可能性がある」との信念のもとコンセプトづくりに着手した。イメージは、土佐人の血肉を表出するような「酒・食にこだわったフェスティバル」。早速、志を共にする有志らと、全国的に名の知れるイベントを視察に訪れ廻った。  それとときを同じくして、土佐の伝統文化でありながらも死語になりつつあった「お客」という言葉を改めて見つめ直す機会を得る。「お客文化の火を消してはいけない」「無礼講で分け隔てない自由な土佐にぴったり。これぞ我らが想い描く祭りに相応しいではないか」。そんないきさつで土佐の伝統文化「お客」が今の時代に蘇った!

それは皿鉢料理の ごとく!

「中心商店街を皿鉢に見立て、その器に個性豊かなイベントを載せて彩ろう、色々あってこそ皿鉢の良さが引き立つ」。そんな発想のもと集まったイベントは、食、酒、アート、音楽、スポーツ、そして漫画まで彩り艶やか。そこには、40年近く行われていた「南国土佐皿鉢祭」も加わった。地域と企業が互いに持ち前の特性を生かしたコラボイベントも多く、第1回から開催されている「ごめん・なはり線 SUNTORY COCKTAIL BAR」はすぐに予約が埋まる人気イベントとして根付いた。  多くの人が関わるイベントだけに、一筋縄でいかないことも多いが、「土佐のおきゃく」は試行錯誤を繰り返しながらもみるみると成長。高知の伝統文化を伝えるだけでなく、その経済効果にも注目が寄せられる。それぞれの団体が独立採算で、事務局がそれをまとめて一手に広報活動をすることで、その影響力は拡大。昨年には、来場者数が8万人を突破。その経済波及効果は8億円を超えた。

土佐を酒の聖地に!

「土佐のおきゃく」期間中、観光客らは中心街アーケードを「さすが高知やね〜」と言いながら、お酒を片手に満喫。この取り組みを「我らの街でも生かしたい」と視察に訪れる団体も増えるなど、土佐の自由な県民性を全国に伝えている。第10回記念となった2015年には、おちょこを両手に酔っぱらって目を回す「べろべろの神様」なるお酒の神様まで誕生。「土佐を酒の聖地に!」と真剣に語る大人たちの自由過ぎる感性、そしてそのユーモアには頭が下がるばかりだ。