人と人をつなぐ道の駅の産直市

そこにあるのは「あたたかさ」
人と人をつなぐ人と人をつなぐ道の駅の産直市

道の駅のお楽しみといえば、やっぱり産直市! 地元のたからものが集結する売り場は、住民を中心とする出品者たちの生きがいの場にもなっている。そこには、人と人をつなぐ温かさがあふれている。

「にろうまいこ」の皆さん

横のつながりで仲間が増えてきた香北町らしい直売所

香美市香北町の「道の駅 美良布」で、直販店「韮生(にろう)の里」を運営しているのは、出品者たち自らによる協同組合。現在は300名ほどの組合員が出品しているという。その多くは専業農家ではなく、畑仕事や加工品づくりを暮らしの一部にしている地元住民。近所の人から「あんたも出してみんかえ?」と誘われたなど、町内の横のつながりもあって、出品者が徐々に増えてきたそう。  

生産者がグループを組んで地元らしい商品を開発・販売していることも、韮生の里の特徴のひとつ。女性グループ「にろうまいこ」が生んだ「韮生 玄米かるかん」は、いまやこの地の名物お菓子。「奥ものべじじばばあんぜん会」も、地域のゆず皮を材料に新商品を展開している。そこには「ちょっと一緒にやってみようや」という、この町らしい仲間感覚、フットワークの軽さも、大いに働いているのだとか。

山椒、小梅、大葉、椎茸など、奥物部地域らしい、季節ごとの山の恵みも売り場に並んでいる。

香北町は、アンパンマンの生みの親、やなせたかしさんのゆかりの地。道の駅には子どもたちも多く訪れる。

夜須町の産品を守るため
出品者たちが結束して助け合う 

上田智子(うえだともこ)さん、野村唯(のむらゆい)さん

「道の駅 やす」にある直売所「やすらぎ市」は、もともと町内にあった良心市が、道の駅のオープンとともに移転したもの。そのため出品者も昔からの顔なじみが多く、お互いを気遣う一体感が根付いている。ドーナツなどを出品する上田さんは、売り場に出ると他の出品者の商品まで傷みがないか見てまわる。世話役としても信頼される山岡さんは、誰に頼まれずともつばめの巣のフン受けを設置している。温かい助け合いがあふれているのだ。  

「赤生姜」のシロップは、そんなやすらぎ市らしい商品のひとつ。赤生姜とは、町の奥地にある羽尾(はお)地区で栽培されてきた、鮮やかな赤みが特徴の珍しい生姜だが、収穫して間もないうちに黒く変色してしまうため、流通には乗りづらいもの。そんな赤生姜を守ろうと、やすらぎ市が製造しているのがこのシロップなのだ。旬の11月頃には、鮮やかな生の赤生姜もこの売り場に並ぶ。

「ここがなかったら生活に張りがないき。儲けやないのよ」と上田さん。 夜須町の若手農家が育てる野菜や果物も、やすらぎ市の自慢で、秋には、田代さん(左写真)ご家族の水晶文旦も並ぶ。

羽尾地区で赤生姜を栽培してきた長野省三さん(右)と、地区の世話役の山岡和三さん(左)。山岡さんが出品するパウンドケーキは絶品。

地元に寄り添うことも 道の駅の大事な役割!

キーワードは「地域と共に!」

道の駅633美の里駅長 尾崎立也さん

昨今、地域の観光振興を意識した道の駅づくりが進められる一方で、「ドライバーのための休憩所だったり、地元産品の販売所だったり、あえて道の駅らしい原点を大切にしています」と話すのは、いの町にある「道の駅 633美(むささび)の里」の駅長の尾さん。売り場をのぞいてみれば、たぬき油や野草茶、わら草履など、昔ながらの山の暮らしを感じさせる産品を見つけることができる。

「地元の生産者さんには、好きな時に好きなだけ出してもらえたら」というのが、尾さんのスタンス。売り場に商品が間に合わない時は、お客さんに「入荷次第、また連絡します」と伝える。その地域らしい暮らしや、地元の生産者のペースを大事にすることも、道の駅に地域のたからものが集まってくる理由のひとつかもしれない。

もっと知りたい!おまけのとさぶし〜誌面には載らなかったこぼれ話〜

道の駅 633美の里
自然豊かな山間地域で助け合う

一番人気の「田舎寿司」を手がけているのは、開業当時のスタッフだった植木さん。当時は、朝3時に仕込み、8時に寿司を届け、その後道の駅で働く生活を 10 年以上続けていた。いの町吾北産の米を使った寿司はマイルドな酸味で食べやすいと評判。「みっちゃんのお寿司を食べに来た」 というファンの声に励まされ、退職した今も寿司を握る。道の駅を支えながら、植木さん自身も「道の駅に支えられて、元気でおれる!」と笑顔で話してくれた。