「未来の子どもたち」へ想いをつなぐ

仁淀川 紙のこいのぼり

●吾川郡いの町波川(仁淀川橋下) ●2019年5月3日(金)〜5日(日)
「不織布」に描かれた鯉が仁淀川橋下を泳ぐ祭り。ワークショップや屋台などが出店し、3日間で約1万5000人を集める、紙の町・いの町の初夏の風物詩。

地元の人がいてこそ

 毎年GWに行われる「仁淀川 紙のこいのぼり」は大勢の人で賑わう。今では全国的に有名な祭りとしてメディアでも多数取り上げられ、すっかりメジャーとなったいの町自慢の祭りだ。中でも一番の見どころは、仁淀川を泳ぐ鯉。水に強い「不織布」に描かれた、約300匹の色鮮やかな鯉たちが川の中に揺らめく美しい姿に、シャッターをきる人が後をたたない。  始まりは、「伊野町100周年記念事業」の一環として。いの町のスローガンである「未来の子どもたち」にもとづき、子どもの健やかな成長を願う象徴として「鯉」を仁淀川へ泳がせてみようと始まった。提案したのは、地元で不織布に鯉を描く「こいのぼりくらぶ」。そのメンバーを中心に、アメゴ釣り、川舟体験、ワークショップなど、地域の人ができることを持ち寄り、紙の町・いの町ならではの祭りが誕生。20年間で少しずつ協力者が増え、その規模を拡大していった。「地元の人が携わってくれるからこそ大きな祭りに成長し、存続することができるんです」と、いの町役場の職員らは声を揃える。

祭りを次世代へ…

 実はこの紙のこいのぼり、1匹作るのに想像以上の手間暇を要する。地域おこし協力隊の小野さんの体験談では「1匹作るのに2〜3日かかるほど手の込んだ作業が必要」。それが約300匹も泳ぐこの祭りがどれだけの人の熱意で継承されてきたか…、そこに想いを巡らせると感慨深くもある。「これからは、若者にこいのぼり作りを継承できるような場をつくる必要がある」と語る一方で、「地元の人たちがこれからも無理なく、楽しんで続けていけるような祭りであるようにしたい」と小野さん。いの町の宝とも言える「仁淀川 紙のこいのぼり」は、地元の人々の愛と熱い想いによって育まれ、そして今、新たな展開を迎えようとしている。


全国最少人口※の村を盛り上げたい ※離島を除く

大川村さくら祭

●大川村井野川268-10 ●4月7日(日)~14日(日) ※7日は桜、14日は芝桜のイベントを開催
大自然に囲まれた人口約400人の大川村で、2000人を集める春の祭り。ソメイヨシノや芝桜、菜の花、チューリップなどが咲き誇る中、飲食ブースや音楽イベントが楽しめる。

ご夫婦で始めた祭り

 春になると山一面が花で埋め尽くされ、多くの人が集まり賑やかな光景が広がる。今年で6回目を迎える「大川村さくら祭」は、この場所にUターンしたご夫婦が個人で始めたものだった。大川村は高知県最北端、吉野川の源流と四国山脈の懐に位置し、人口は約400人。「日本で1番人口が少ないこの村にお客様をもてなす拠点をつくりたい」と立ち上がった。始めは自宅の裏山を伐採し少しずつ桜を植え始めるという、地道な努力の積み重ねから。その甲斐あって、イベントをスタートした第1回目から来場者数は300人と大賑わい。しかし、会場は険しい山の中。訪れた人の集いの場所がなく、「せめて来てくれた人の憩いの場を作りたい」と、思い切ってクラウドファンディングに乗り出した。その資金で見事、自宅の納屋を改修し「さくら家」が完成。建物からは花々を間近に眺めながら、ゆっくりと寛ぐことができるようになり、昨年は2000人もの来場者が訪れた。

今後も持続的に

 桜の手入れは冬場の厳しい寒さの中で行うため、とても過酷。「会場の整備など苦労はたくさんある」とご夫婦。それでも「来た人の笑顔が見たいから」と地域のために一歩ずつ取り組みを進めてきた結果、今では実行委員会も立ち上がり約30名が運営に携わるまでに成長。祭りの期間以外にも村内外から足を運んでもらえるようワークショップなどを開催している。今年は大川村ブランドとして全国に発信するため、自宅の茶園から作ったお茶の販売も行う予定。「この村には400人それぞれの個性的な生き方があり、大自然の中で紡がれる昔ながらの生活が残っています。私もこの村をより楽しく豊かにしていきたい」。村への大きな愛情で今年もまた、花々に想いを咲かせる。