映画館の浪漫はまだまだ終わらない

現役の昭和レトロ劇場「大心劇場」

昭和29年〜

大心劇場

フィルムの映画を上映する際も、音響は最新のドルビーサラウンドを使用するなど、視聴環境を整えている。映写機は小松さんが自ら操作している。

浪漫が溢れていた

あの頃の映画館を今も

 清流・安田川が流れ、穏やかな田んぼの景色が広がる安田町の里山に、今も現役の映画館「大心劇場」がある。昭和レトロな雰囲気が「エモい」と言われる昨今、ネットやSNSで話題になることもあるこの劇場で、支配人を務めている小松さん。こだわりは、商業施設のシネコン(複合映画館)には真似できないような、「昔ながらの映画館ならではの浪漫」だ。全国から集めた昭和映画のポスターを壁一面に貼ったり、映画看板を自ら手描きで制作したり。「面白いもので、鑑賞する空間をどう演出するかで、映画の見え方も変わってくる」と笑う。独自の路線を行くのは、同じく映画館を営んでいた父親の背中を見ていたから。「生まれてからずっと身近にあった、父の劇場にある浪漫を無くしたくなくて」。  

 フィルムからデジタルへ、小さなシアターからシネコンへと映画業界が変わっていく中、フィルム映画を扱い続けている大心劇場。「いつの時代も、わざわざ足を運んできてくれるお客さんとの出会いは嬉しいものですね」と話してくれた。

大心劇場

映画の公開に合わせて、レトロタッチな看板を制作。昭和の時代は多くの映画館で手描き看板が掲げられた。