03. 職場をシェアするシェアオフィス
空間をシェアし、技をシェアし、想いをシェアする… ここは互いを高め合う新たなコミュニティ。
シェアすることを重んじた土佐人の気質が今の若者に繋がる。
シェアオフィスが昔と今を繋ぐ
一つの建物を複数の団体や企業が間借りするシェアオフィスが、先人と若者、昔と今を繋ぐ接点として、田舎町に新たな人の流れを生んでいる。四万十町の旧広井小学校をシェアする「シェアオフィス161」はまさにそのモデルケースだ。管理人を務める「一般社団法人 いなかパイプ」が中心となって、シェアオフィスの新たな価値を創造。若者向けには、地域のおんちゃん・おばちゃんを先生に、野菜作りやわらじ作り、い草バッグ作りなどの教室を企画。逆に地域のおんちゃん・おばちゃん向けには、若者が先生となってパソコン教室を開催するなど、互いのニーズをマッチング。それぞれが培ってきた技術をシェアすることで、普段は接点を持つ機会のない世代間に交流が生まれている。
シェア仲間は海外からも…
もちろん、ここを利用するのは地域の人たちだけではない。例えば、ロンドン在住の日本人が1週間オフィスをレンタルして、仕事の傍ら自然を散策したり、地域の人と触れ合ったりと、悠々自適にときを過ごしていくケースもあれば、都会から若者を招いた「田舎体験」が行なわれることもある。ここは一見、田舎の閉鎖的な場所に思われがちだが、「田舎とは思えないくらい刺激が多い、常に情報や人が行き交っている」と、4年ほど前から入居する「株式会社 四万十ドラマ」のスタッフも語る。同社の取引先となるのは、お茶組合や栗農家さんなど地域の業者さん。打ち合わせの流れで、シェアオフィスの仲間を巻き込み校庭BBQ… なんて光景も珍しくない。そんな他愛のないコミュニケーションの中にこそ、ヒントやアイディアがあるのだと言う。
カフェもシェアする!
シェアオフィスの一画には「パイプカフェ」という名のカフェスペースまで存在する。ここもまた、好きなときに誰でも使えるシェア空間。この日は月2度ほど利用しているというママ達が集っていた。子どもを遊ばせながら~、手仕事をしながら~、相談しながら~、と何かをしながら時間と空間をシェアするのがママ達のモットー。正午になると、ランチのおもてなしまで。そこには、待ってましたとばかり、全オフィスからランチを求めて入居者が訪れるという「学校だけに給食!?」を思わすユニークな光景が広がっていた。
土佐の伝統に通じるシェア文化
オフィスをシェアすることで、一企業では生まれてこなかった新たな価値がときとして生まれることがある。触れ合い、学び合い、語らい、シェアすることで生まれる可能性は無限大。そんなシェアオフィスの営みは、人と人の交流を古くから重んじる土佐人の気質を受け継いでいるかのようだ。