遍路道中にあるおやつ【元祖山崎へんろいし饅頭】

四国はもとより、ここ高知でも昔から続いてきたお遍路さんへの「お接待」。 エネルギー源となるあまいお菓子を振る舞ったり、労いの言葉をかけたり、 そこにあるのはお遍路さんの無事を願う人々の温かい気持ち。 今回はお遍路さんにまつわる甘味や人にスポットを当て、 甘味を通して見えてきた、おもてなしの文化をひもとく。


へんろいし饅頭-手元

お遍路さんを支える
あまいお接待


高知の霊場マップ

遍路とは

四国にある弘法大師ゆかりの88の霊場を巡礼すること。回遊型の参拝ルートが特徴で、その道のりは全長約1400キロ。1200年以上の歴史があり、「四国遍路」のストーリーは、「日本遺産」として文化庁から認定されている。

お遍路イラスト

お接待とは

お遍路さんに食べ物や飲み物を振る舞い、時には無料の宿やお風呂を提供するおもてなしのこと。四国遍路ならではの風習で、四国の人々は昔からお遍路さんを弘法大師の分身として捉えお接待を行ってきた。

遍路道中にあるおやつ

道中の活力にもなる甘いおやつ。 誕生したきっかけや 作り手の思いを聞いた。

出来立ての湯気立つへんろいし饅頭

霊場巡りの疲れを癒やす へんろいし饅頭

 創業131年の歴史を持つ、南国市の「元祖山崎へんろいし饅頭」。店舗から程近い場所に第29番札所「国分寺(こくぶんじ)」があり、その歴史は明治25年に初代夫妻が「八十八ヶ所巡礼のお遍路さん接待のために」と店を構えたことに始まる。近隣の札所から国分寺までは、徒歩で約2時間弱。当時、道中の南国平野には陰場になる場所も少なかったことから、暑さを紛らわせてくれる甘い饅頭は、たちまちお遍路さんの間で人気になったそう。「へんろいし饅頭」は、そんな当時の味をそのままに残す看板商品で、薄茶色の生地と小豆餡がたっぷり入った素朴な味わいが特徴。「昔は、宿場町などで『あそこの饅頭が美味しい』と噂が立って、今でいう口コミのような感覚で人気になっていった、と聞いています」と話すのは、四代目の山崎哲美さん。現在では、観光客からの需要も高まったことで厨房に機械も導入されているが、小豆の煮え具合の確認や形を整える仕上げには、やはり経験を重ねた目と手が必要だと哲美さんは言う。四代にわたり引き継いできた「変わらぬ味」と「おもてなしの精神」は、令和となった現在も、お遍路さんの疲れを癒やし、記憶に残り続けていく。

山崎-哲美さん
元祖山崎 へんろいし饅頭 四代目 山崎 哲美(やまさき てつみ)さん

山﨑さん「幼い頃から家業に携わる中で、多くのお遍路さんと出会い、交流が生まれました。いつも「お気を付けて」とお見送りさせてもらいながら、沢山の元気をいただいています!」

へんろいし饅頭-外観

南国市ののどかな田園風景の中に構えられた風情ある店舗。朝8時の開店に合わせて、お遍路さんや常連客が足を運ぶ。

へんろいし饅頭

ひび割れが特徴のもっちりとした薄茶色の皮の中には、あっさりとした甘みの餡。蒸し立ての熱々の饅頭は格別の美味しさ。

マップ