高知県史(自治体史)とは?
高知県について伝え残されたさまざまな資料を調査し、本県の歴史を詳細に記したもの。郷土の歴史を知る、大切な手がかりだ。
幡多ゼミナール資料館での聞取調査の様子。
旧中浜小学校(土佐清水市)資料調査の様子。大門部会長(奥)、岩佐副部会長(手前)
現代部会の針路 高知県の現代史を 発見する航海
令和5年4月からスタートした高知県史現代部会は、大門正克部会長、岩佐和幸副部会長を中心に、計8名の委員が日々「高知県の現代史の特徴はなにか」を考えながら、精力的に調査に取り組んでいる。
高知県の現代史の特徴を探す航海に出た船長・副船長に、針路の決め方を尋ねた。
「一般的な自治体史であれば、担当する分野ごとで役割分担を決め、個々の委員で調査することが多い。ただ、現代部会はチームワークを大切にし、まずは全員で調査し、議論の上で『高知県の現代史の特徴を捉えること』を重視したい。」(大門部会長)
「前回(昭和)の県史では、現代史の部分はほとんど記述されておらず、今回立ち上がった現代部会での調査・議論を通じて最終的に刊行される内容が、高知県の現代史として後世へつながります。『チーム全員で思いを共有し、県民のくらしを軸につづること』これが現代部会のスローガンです。」(岩佐副部会長)
つながるくらし 高知に生きた人たち
令和5年8月に実施した幡多地域の調査で、現代部会の進む方向性が具体的に見えてきた。
調査した一つ一つの事柄について、聞き取りや資料から見えてきたもの、それは県民一人一人の「くらし」だ。旧満州地域(中国東北部)からの引揚者が歩んできた戦後のくらし、当時の駐在保健婦がみてきた住民のくらし、ビキニ環礁被曝の被害調査に取り組んだ高校生たちのみた漁村のくらし、県外に出た人たちへの小学校からの便り。
出来事を追うだけなら「昭和○○年はこんなことがあった」と書けるかもしれない。ただ、それだけでは高知県で生きてきた人びとの人生と時代を捉えることはできない。
なぜ人びとは高知で生きてきたのか。なぜ離れる必要があったのか。聞き取りや残されてきた資料・文献から、現代部会のチーム全員で高知県の現代史の特徴を読み解き、高知県の未来へとつないでいく。
史料が語るもの語 第七回
安芸市立歴史民俗資料館
土佐藩家老五藤氏の屋敷跡に設けられた安芸市立歴史民俗資料館。安芸市ゆかりの展示はもちろん、多くの貴重な資料も所蔵。今回紹介する資料は、同館の管理の下、安芸市民図書館で大切に保管されてきた。
明治35年の川北村農会統計書類綴
令和5年9月に行われた近代部会による 資料調査の様子。
よみがえる明治大正期の村の姿 奇跡的に残された役場資料
安芸市立歴史民俗資料館に所蔵されている資料としては、土佐藩の家老五藤家の資料群『五藤家文書』が有名だが、実は同館が安芸市発足前の旧村資料を県内では類を見ない規模で所蔵していることは、あまり知られていない。明治・大正期の村会(戦前の村議会)の議案書や、議事録だけでも、かつての川北村、安芸村(町)など、複数町村のものが長期間にわたって保存されている。資料からは、インフラ整備や学校教育など、当時の地域の課題や時代の風潮を読み取ることができる。今後、これらの調査が進むことで、高知の近代村落の成立と発展の経緯が明らかにされていく。
安芸市立 歴史民俗資料館 (安芸市)