Cycling Shop ヤマネ 代表/山根 大輔さん

高知の風土に育まれた「土佐人」たちは 今日もそれぞれの分野から「土佐の風」を発信

そこに新たな文化を重ねながら…

自転車が教えてくれた自由な楽しみ。

サイクリング文化を伝えていきたい。

GUEST

Cycling Shop ヤマネ 代表/山根 大輔 さん

山根さん

高知の自転車界に 多大な影響を与えた父

自転車少年の成長

 爽やかな風が吹き抜けていく高知市「土佐道路」の沿道に、「Cycling Shop ヤマネ」はある。昭和53年の創業以来、「高知を代表する自転車店」と、数多くの自転車乗りから信頼され続ける名店。創業者は、高知県におけるサイクリングスポーツの普及に不可欠な役割を果たした、山根博敏(ひろとし)さんだ。時代は流れ、さまざまなサイクリングブームや業界の変化を経て、ヤマネの代表者は、息子の大輔さんに引き継がれている。  「やはり父の影響で、幼い頃から自転車のレースに出場していましたね」と大輔さん。県内のみならず、四国や関西にもよく遠征した。整備された舗装路はもちろん、大自然のオフロードコースも走り、子どもながらに爽快だったという。当時のヤマネには熱心な常連客やサイクリストたちが通い、高品質な日本製のスポーツ自転車も並んでいた。「当時は、ロードレースやランドナー(自転車ツーリング)の文化が、全盛期を迎えようとしていた時代。父も毎年、自転車で走る記録会を主催していて、百人規模の参加者があったことも覚えています」。高知で自転車を楽しめる環境づくりを。そんな博敏さんの思いと共に、大輔さんは成長していった。

山根さん-家族写真

一緒に自転車を楽しんできた、博敏さんと大輔さん。博敏さんは、サイクリング文化のメッカとも言われる京都の自転車店で修行したという。

自転車で走る様子

自転車に背を向けて 気がついたのは

自転車が持つ自由さ

 やがて高校生になった大輔さん。自転車はというと、一転してほとんど乗らなくなっていたそう。「レースを終えて高知に帰ってくると、地元の友達は自転車競技なんて知らなくて。それが寂しかったんでしょうね」。あえて自転車と距離をとる反抗期。周囲から「ヤマネの息子」として一目置かれながらも、自転車競技部から誘われる度に逃げていたそう。時代は90年代。マウンテンバイクやBMXといった新しいスポーツタイプの自転車が流行していたが、大輔さんは関心がないふり。また、博敏さんが大事にしていた「大切にメンテナンスしながら長く乗る」という自転車業界の価値観も、大量消費される安価な自転車が海外から輸入され始めたことをきっかけに、徐々に押しやられていった。やがて大輔さんは大学進学で北海道へ。登山やスキーといったアウトドアスポーツにのめり込み、そのまま同地でツアーガイドとして働くように。「ただ、28歳の頃ですかね。体験型観光の研修会に参加したんです。その内容が、富良野のスキー場で楽しむマウンテンバイク体験で。全然知らなかった最新のバイクに乗ってみたら、衝撃を感じるくらい爽快で、『なんだ、自転車もアウトドアスポーツじゃんか』って、夢中になれる楽しさを思い出したんですね。思春期の頃は、一人で走る孤独感や競技色の強さに反抗してしまったけれど、そんな価値観を変えて、自分を自由にしてくれたのも、やっぱり自転車だったんです」。

山根さん-お父さん

父・博敏さんの存在

自転車の新しい文化を 自ら創っていく

 こうしてまた大輔さんは、自転車を楽しむように。30歳の頃には、博敏さんが体調を崩したことをきっかけに高知に戻り、家業の手伝いも始めた。「実は例の富良野での研修会で、自分の古いマウンテンバイクを壊してしまったんです。『ヤマネの息子なのに、自転車も修理できないのか』と、もやもやもあって。父から修理や組み立てを学びました」。時に衝突することもあった二人だが、徐々に大輔さんが仕事を引き継ぎ、平成31年、博敏さんは逝去された。「高知県サイクリング協会の理事長だとか、高知国体では審判長も務めたり。そんな父の話を聞く度に、高知県の自転車業界に与えた影響とか、存在の大きさを実感します。厳しいところもあったけれど、父のことを心から尊敬しています」。  

 現在、大輔さんは、母の由紀子さんと共に、ヤマネを切り盛りする日々。自転車の修理や販売はもちろん、サイクリングイベントを開催したり、安全な乗り方を伝えたりと、精力的に活動している。「自転車は、好きな場所に自由に走って行ける、多様性がある乗り物。グラベルロードといった新しいタイプの自転車も登場していますし、子ども達が自転車の世界にはまってしまうようなバイクパークを、いつか高知に作りたいですね」。

プライムトーク-ラジオ収録の様子

エフエム高知で毎週金曜日に放送中の「プライムトーク」に出演した時の大輔さん。大輔さんの出演回は、令和5年12月29日、令和6年1月5日の2週にわたってオンエア。