プライムトーク DANDYISM TOSA BAR Craps/塩田 貴志さん

高知の風土に育まれた「土佐人」たちは 今日もそれぞれの分野から「土佐の風」を発信

そこに新たな文化を重ねながら…

GUEST

DANDYISM TOSA BAR Craps/

とさぶし42-プライム

「土佐」にこだわる名バーテンダーが
牧野博士と出会う

高知初のクラフトジンが誕生した。そんな話題が駆け巡ったのは、令和4年のこと。その名も「マキノジン」。なんと牧野博士にまつわるストーリーが、たくさん詰まっているらしい。

手掛けたのは、高知県最大の繁華街・帯屋町で知る人ぞ知る名バーテンダー、「バークラップス」の塩田貴志さん。この組み合わせに、お酒と社交が大好きな土佐人たちが、どれほど胸を熱くしただろう。

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夜の喧騒とは一線を画す、落ち着いた雰囲気の「オーセンティックバー」を、高知で作り上げてきた塩田さん。40年近いキャリアがあるベテランのバーテンダーだが、それに負けないくらい、「土佐」に対するこだわりが強い。「ローカルカクテルにこだわりたい、という気持ちがずっとありまして。

都会の洗練されたカクテルにはちょっとないような、地元のフルーツや野菜、それに地酒を使ったオリジナルカクテルを作ってきました」。その言葉通り、塩田さんがお酒に合わせてきたのは、文旦やブシュカンなど、まさに土佐の味覚。

そのため、「土佐学協会」の土佐の酢みかん文化を学ぶイベントにも参加しているという。実は、塩田さんがマキノジンのアイデアと出会ったのも、こちらで開催された「利き木酢(きききず、酢みかんの果汁の試飲)」のイベントだった。

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土佐の酢みかんを生かした、塩田さんのオリジナルカクテル。マキノジンだからこそよく合う、土佐の柑橘らしいシトラスの風味が香る。

バーテンダーだからこそ 作り出すことができた高知初のクラフトジン

「さまざまな酢みかんの果汁を試す中で、『これはジンで味わいたいね!』という声が上がったそうで。それを聞いた時、世界的にブームが続いているクラフトジンを高知で作りたい、という僕の思いが、はっきりと焦点を結んだ感覚がしたんです」。

当時、食品ビジネスに取り組む人材を育成する「土佐FBC」に通っていた塩田さんは、早速ジンの製造方法、とりわけ蒸留技術について研究を開始。当時は特に、サントリーのジャパニーズクラフトジン「ROKU」を開発した鳥井和之さんと交流できたことが大きかったという。「鳥井さんに、どうすれば蒸留がうまくいくのか尋ねたら、『それこそ、カクテルのインフュージュン(浸漬酒、風味付け)だよ』と。バーテンダーの目線でやればいいんだ、と言ってもらえたんです。この言葉は大きかったですね」。

自信を持った塩田さんは、クラフトジンの風味付けに欠かせないボタニカル(植物系の素材)として、12種類の高知県産の素材を選出。「高知のボタニカルといえば牧野さん」と意識し、そこには博士の妻にちなんでその名が付けられた「スエコザサ」も加えた。

それらの選定や配合比率の検討が進んでいくと、塩田さんと「マキノジン」の物語は、いよいよ牧野博士の故郷、佐川町に移ってゆく。

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牧野博士のエールと 運命を感じながら

出来上がったマキノジン

クラフトジンを作るなら、そのスピリッツ(原酒)は、自身がかねてよりほれ込んでいた、佐川町の酒造「司牡丹」の焼酎と決めていたという塩田さん。満を持して司牡丹の竹村社長に話を持ち掛けたところ、最初はとても驚かれたと言う。

「司牡丹でジンを作る蒸留器を置いていた場所は、なんと牧野さんの生家があった酒蔵の跡地だそうで。運命に導かれてきたみたいでした」。そこにあったのは、もう10年以上も稼働していない「ポンコツ蒸留器」だったが、かえって塩田さんは「土佐人魂に火がついた」と言う。

「クラフトジン作りを通じて、どんどん牧野さんと距離が近くなっていったように思います。学位を取るより山野で植物採集をしたかったように、自分が本当にやりたいことをやる牧野さんの姿に勇気をもらいました」。 

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さらに牧野博士のエールを感じたのは、クラウドファンディングに挑戦した時。「資金集めでは、日本全国の牧野ファンから応援してもらえたんです。牧野さんに詳しい、作家のいとうせいこうさんも応援してくれて。博士が愛され続けていることが分かりました」。  

こうして、令和3年10月に最初の蒸留にこぎ着けたマキノジン。塩田さんが思い描いた通りの、土佐らしい「パーフェクトシトラスフレーバー」に仕上がった。「牧野さんの業績のように、世界に通用するクラフトジンをこれからも作っていきたい」と、今後の目標を語ってくれた。

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エフエム高知で毎週金曜日に放送中の「プライムトーク」に出演した時の塩田さん。塩田さんの出演回は、令和5年3月24日、3月31日の2週にわたってオンエア。