プライムトーク まるふく農園「楠瀬健太さん」

高知の風土に育まれた「土佐人」たちは 今日もそれぞれの分野から「土佐の風」を発信

そこに新たな文化を重ねながら…

GUEST

まるふく農園/楠瀬健太さん

まるふく農園-楠瀬さん

当時まだ珍しかった ハーブに囲まれた 少年時代の思い出

 「ハーブ」と言っても、まだほとんど馴染みがなかった平成の初頭、いち早くハーブ栽培に取り組み始めた農園が、高知市福井町にある。その名は「まるふく農園」。現在、栽培するハーブの品種は、ゆうに100種類を超える。手がけているのは、二代目の楠瀬健太さんだ。

 先代である父、康博さんがハーブ栽培を始めたのは、昭和60年頃のこと。旧友であるフランス料理のシェフから栽培の依頼を受けたことがきっかけだった。栽培方法を研究するのも、種や苗を手に入れるのも、当時はひと苦労。ただ、康博さんいわく「意外にも、いろんな種類のハーブが、面白いほどできた」と、夢中になっていたのだとか。

 かたや少年時代の楠瀬さんにとって、ハーブは「両親が持ってくるヘンな植物」。母親の朝子さんもハーブを使った料理教室を開催していたが、「まだまだ試行錯誤の状態なんです。例えば、ハーブがお味噌汁に入っていたり。今でこそ有名なパクチーなんかも、30年前に既に出合っていて、強烈なにおいに驚いた記憶がありますね」と笑う。

 どこか得体の知れない、不 思議な植物、ハーブ。特に、それらの独特なにおいが、自身の運命を導いていくことを、まだ少年だった楠瀬さんは知らなかった。

まるふく農園-ハーブ

まるふく農園-ハーブ

小規模ながら、100種類を超えるハーブが栽培されている「まるふく農園」。農薬や肥料を使わない、炭素循環農法の考え方で営まれている。

その香りに誘われて ハーブを扱う仕事へ やがて専門農家に

 やがて大学進学のため、上京した楠瀬さん。東京ではファッションや音楽カルチャーにどっぷりと浸かる日々を過ごす。ハーブと再会したのは、就職活動を始めようか、という頃。康博さんの一言もあり、ドライハーブやアロマ等を扱う東京の商社「カリス成城」を訪れたときだった。「ハーブティーの製 造現場に案内されたとき、ふいに懐かしい、馴染みのある香りが漂ってきたんです。『あ、カモミールですか?』と聞いたら、『わかるんだね』と驚かれて。それにしても、匂いがこんなに落ち着くものなんだ、と。ほとんど忘れていた実家やハーブのことが、まざまざと思い浮かびました」。そんな縁もあり、楠瀬さんは同社に就職。およそ6年にわたって、ハーブ製品の営業や、商品企画の仕事に携わった。世界中のハーブを学ぶこともできたという。  

 その後、平成19年にUターンした楠瀬さん。祖母から「農園の跡取りぞね」と言われており、まずは康博さんの手伝いから始めたが、100種類を超えるハーブの栽培技術を身につけるまで、とても苦労したという。さらに予想外だったのは、当時の景気のあおりを受けて、食用ハーブの需要が減ってきたこと。楠瀬さんは、ハーブの専門農家として新しい仕事にチャレンジすることを求められた。

栽培農家が開く ハーブの可能性と 香りに包まれる日々

 そこで楠瀬さんが取り組んだのが、家庭用のハーブの苗づくり。地元・福井町の花き栽培の農家にも力を借り、2年ほどかけて日曜市やホームセンターで販売を始めることができたという。だがそれ以上にハーブの可能性を見出したのは、知り合いが東京でカフェをオープンさせたときのこと。楠瀬さんが持参したハーブの数々に、「すごい!見たことない!」という注目が集まり、なんと東京の生花店と取引が始まるきっかけになったのだ。「東京のハーブ業界で働いていたこともあり、『東京には、自分の仕事はないな』と思っていたんです。でも、たくさんの種類を栽培できる小規模なハーブ農園だからこそ、珍しいものや、季節感を感じられるものを提供できることに、このとき気づいたんです」。 さらに始まったのが、ハーブブーケの出荷。生花店の花材として求められた商品だったが、現在ではファッション撮影の演出や、料理研究家が使う飾り等にも使用されているという。

 「ハーブブーケは、香りのバランスも大事。何かがきつ過ぎず、また何が香っているのか分からないけど、でも良い香りになるように。複雑に混ざったにおいこそ、魅力ですね」。まるふく農園にも、そんな豊かなハーブの香りが漂う。現在では、楠瀬さん自身、それに癒されているという。

まるふく農園-ハーブ

まるふく農園-プライムトーク

エフエム高知で毎週金曜日に放送中の「プライムトーク」に出演した時の楠瀬さん。楠瀬さんの出演回は、令和4年9月23日、30日の2週にわたってオンエア。