プライムトーク 和紙アーティスト「竹山美紀」

GUEST

和紙アーティスト/竹山美紀さん

東京都墨田区出身。東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。在学時から和紙アーティストとして活動をはじめ、令和2年に高知県越知町に移住。現在は、和紙雑貨を販売する「WASHI ORIORI」を運営し、ワークショップなども開催している。

人を夢中にさせる和紙 その魅力に引き込まれ 和紙の探究に

日本三大和紙の一つに数えられる、土佐和紙。その柔らかくて優しい風合いに引き込まれるかのように作品を作りはじめ、何かに導かれるようにして、高知に移住を果たした作家がいる。和紙アーティストの竹山美紀さんだ。
 幼い頃から絵を描くことが好きで、夏休みの工作に和紙のちぎり絵を選んだことが、和紙との最初の出会い。彼女に大きな影響を与えているのは、いつも忙しそうにしている母親が、自分以上に和紙のちぎり絵を楽しんでいた幼い頃の記憶。「和紙には人を夢中にさせる力がある」と、子どもながらに嬉しく感じていたという。やがて、芸術大学の油画科に通うようになった彼女は、自らの作品作りに和紙を取り入れようと思いついた。

そして、久しぶりに触れた和紙の優しい質感に、引き込まれるように和紙アートに没頭。「もう一個作ってみよう、もう一個作ってみよう」と、作品制作を重ねるうちに、その興味は、いつしか和紙そのものの探究へと向かうようになっていった。

写真は、竹山さんが制作した雑貨「WASHI PONPON」。「土佐典具帖紙」を素材としており、繊維の独特な質感が、ふわふわと可愛らしいルックスに活かされている。

土佐和紙が導いた たくさんの出会い やがて高知に移住

 それから日本各地の和紙職人を訪ね、和紙づくりの研修を重ねるようになった竹山さんは、和紙作りの奥深さにのめり込んでいく。紙すきの技術はもちろん、きれいな水や天然の素材を必要とする和紙は、まさに「人間と自然が一体になって作られるものだ」と学び、大きな感動を覚えた。

初めて高知を訪れたのも、そんな当時のこと。東京の和紙問屋で、美しく染め上げられた一枚の土佐和紙に出会い、和紙職人の奥様に「ぜひ高知にいらっしゃい」と誘ってもらったことがきっかけ。そうして訪れた高知で、竹山さんは運命の出会いを果たすことになる。
 竹山さんが高知で目にしたのは、貴重な技術を惜しげもなく教えてくれる職人の姿や、高知で生きる人たちの大らかな人柄。「高知の人は本当に温かくて。他の職人さんを紹介してくれたり、滞在場所や、作品発表の場まで紹介してくれたりしたんです。土佐和紙が、たくさんの出会いを生んでくれました」。高知の人たちに心惹かれた彼女は、芸術大学を卒業した後も高知に長期滞在しながら、個展に向けた創作活動を続けていた。そんな中で出会ったのが、和紙作家でもある現在のご主人。「いつか一緒に暮らしたい」という思いが叶い、令和2年、越知町にめでたく移住を果たした。

自分だからできる 大好きな土佐和紙へ エールを込めて

高知県民の仲間入りを果たした竹山さんが、新たにはじめたことがある。それは、土佐和紙を素材にした雑貨作りだ。「土佐和紙の素晴らしさや、土佐和紙の職人さんの技が与えてくれる感動を、もっと若い人に知ってもらいたい」と、土佐和紙を使ったアクセサリーのワークショップを企画。

思いを実現させるため、地元で借りられるチャレンジショップを利用して、土佐和紙の雑貨販売や、ワークショップが開催できるお店をはじめた。それがこの春オープンした「WASHI ORIORI」。店頭には自身が手掛けた土佐和紙雑貨を並べ、そこかしこに土佐和紙への思いをちりばめた。その中には、「WASHI PONPON」という可愛らしいアクセサリーがあり、「え、これが土佐和紙なの?」と初めて手に取った方を驚かせているんだという。

「これは、和紙職人が手がけた土佐典具帖紙を素材に、ふわふわとした繊維が丸められたイヤリングで、和紙職人さんへのエールも込めています。チアリーディングで使うポンポンを模して作ったんです。意外と耐久性もあって、和紙の丈夫さも感じられるんですよ」と嬉しそうに話してくれた。
 日本各地の産地と同様に、生産者が減り続けている土佐和紙。「生活が苦しいから、もう辞めようと思っている」土佐和紙職人もいる。「職人さん自身は和紙づくりが大好きだし、代々継承されてきた技術がなくなってしまうのは、とても悲しいこと。だからこそ、自分ならではのやり方で、土佐和紙の魅力を伝えていきたい」と竹山さん。伝えたいのは、土佐和紙に触れながらモノづくりをする、時間を忘れて没頭してしまうような楽しさだ。

エフエム高知で毎週金曜日に放送中の「プライムトーク」に出演した時の竹山さん。竹山さんの出演回は、4月1日、8日の2週にわたってオンエア。