つないでつむいで 県史編さん室

高知県史(自治体史)とは?

高知県について伝え残されたさまざまな資料を調査し、本県の歴史を詳細に記したもの。郷土の歴史を知る、大切な手がかりだ。

高知県史明治100年を機に昭和43年から53年にかけて全10巻刊行された、前回の高知県史。およそ50年の歳月が過ぎた今、新しい高知県史の編さんが求められている。

高知県庁に 県史編さん室が発足!

現在、私たちが手に取ることができる『高知県史』は、明治百年を機に刊行されたもの。その後の半世紀、歴史研究は大きく進み、従来の定説を覆すような発見もあった。歴史のあり方が大きく変わっているのだ。  

例えば、高速道路の建設をきっかけに、平成9年から行われた「居徳遺跡群(土佐市高岡町)」の発掘調査では、鋭利な道具で傷つけられた痕跡のある人骨や、木の表面を火であぶり石器で削ったすきなどが出土した。これは、狩猟採集を中心とした従来の縄文時代の世界観を大きく変える発見と考えられている。  

こうした数々の新発見に対応し、郷土の歴史を未来につなぐ人材を育成するため、昨年度、高知県庁に県史編さん室が設置され、20年かけて新たな県史を編さんすることになった。

山﨑室長
県史編さん室 山﨑昌宏室長
高知家の家族の歴史を みんなの力で紡いでいく

徹底的な歴史資料の掘り起こしから、本編・資料編の刊行まで、膨大な編さん作業を担う県史編さん室には、県内外から多くの専門家が関わっている。  

さまざまな歴史分野に精通する委員の協力のもと、まずは近世・近代・民俗の三分野の調査に着手しているが、膨大な資料の調査をスタッフだけで進めることは困難を極める。  

そこで、歴史に関心のある県内の学生を中心とした「歴史資料調査隊」を組織し、調査に必要な知識や技能の研修を始めようとしているところだ。  

新しい県史が完成するのは20年後。高知家の家族みんなが築き上げた歴史を後世に伝えていくため、今日も県史編さん室は調査を続けている。

史料が語るもの語
第一回 土佐国分寺

古代から現代まで連綿と続く土佐国分寺。そこに眠っているのは江戸時代から数百年に及ぶ歴史を伝える文書の数々。土佐の歴史研究における重要な史料として、いま注目を集めている。

保管されている歴史資料
寺院内には多数の歴史資料が保管されている
国分寺調査の様子
高知県史近世部会による資料調査の様子
国分寺に眠る古文書に ひもとかれる土佐の歴史

国分寺で行われている古文書調査では、現在1320点にも及ぶ文書の分類が完了し、寺略史をはじめとした国分寺に関する文書はもちろんのこと、江戸時代の地域や土佐藩に関するものなど様々な歴史を明らかにする貴重な文書の数々が見つかっている。面白い話では「高知城太鼓丸の鐘の音色が悪くなったので、良い音色で知られる国分寺の鐘を献上してはどうか?」といった、当時の様子が垣間見える内容のものもあるという。今後の調査で、新たな土佐の歴史がひもとかれていくことが期待されている。