高知県内各地に残る、牧野博士の足跡。地元住民が立ち上がり、博士と草花を楽しむ道として整備が進んでいる。
牧野博士の発見を追体験できる道
高知県内はもちろん、日本全国に自ら足を運び、各地で植物採集を行った牧野博士。その記録は「牧野富太郎博士植物採集 行動録」などに詳細に記録されているが、近年、その足跡を辿ろうという取り組みが活発になっている。牽引するのは、高知県立牧野植物園に長年勤めた稲垣さん。そして、博士が訪れたそれぞれの地域の地元住民たちだ。
「牧野博士の歩いた道には、博士が記録した草花の子孫や、触れた樹木が今でも残っていることがあります。手探りで探し当てた時は、やはりあったか!と、感動は大きい。命名種や希少種などもあり、『牧野博士の道』にはロマンが詰まっているんです」と稲垣さんは話す。
稲垣さんにとって牧野さんとは
苦労して身につけた知識を、誰にでも惜しげなく与えた、おおらかな人。
博士や草花から生まれる交流
将来は日本全国に広げたい
仲間と共におよそ20年前から始まったこの取り組み。現在は、大月町や三原村、越知町などに広がり、各地でコースの整備と草花ガイドの育成が進んでいる。
「博士がスケッチをした場所や眺めた景色、見つけた植物。こういったものを探して、地域を訪れた人に紹介するのは、地元住民でなければ」と稲垣さん。令和4年には佐川町でも「佐川さとやま遊友会」が発足し、牧野博士ゆかりの散策コースを発信。
博士が見つけ、現在は絶滅危惧種になった「サギソウ」の復活にも取り組む。稲垣さんは「県内の各市町村全てに博士の道を整備すれば、観光資源になります。将来は、日本の各都道府県全てに博士の道ができて、交流が生まれてくれたら」と意気込む。
高知県内の牧野博士ゆかりのスポット
室戸市
植物採集や観察会で訪れた地。「アコウ」や牧野博士が学名を命名した「ハマアザミ」などを見ることができる。
安芸市
波の侵食によりできた洞窟で、さまざまなシダ植物が見られる。牧野博士もここを訪れ、シダ植物を採集した。
大月町
かつて牧野博士が見たという幻の山桜。満月の夜に満開になるという言い伝えから「月光桜」と名付けられ、親しまれている。