西暦460年代に創建され、横浪三里を見守ること1550余年。 1663年(寛文3年)に、第2代土佐藩主山内忠義によって再建された本殿、 拝殿、幣殿が国の重要文化財に指定されている。 入江に面した鳥居が「土佐の宮島」と称される所以。 時代を経ても変わらない美しさがそこにはある。

古来より変わらぬ佇まいと景色に心癒される 1550余年以前より神が住まう鎮守の社

 高知県西部、須崎市の浦ノ内湾に「鳴無神社」は佇む。太平洋の荒々しい潮騒とはうって変わり、波静かな入江の奥深くに、創建1550余年、荘厳な社殿を拝し、時代を経て鎮守している。御本殿、幣殿、拝殿の3棟からなり、いずれも国の重要文化財に指定された、自然と静寂とが織り成す神聖な空間。古事記・日本書紀によれば、人の形をした「一言主大神」が土佐国高岡郡浦ノ内村の南半島部に上陸。立ち上る煙に気づいた鳴無の里人が大神をお連れし、宮殿を建て奉安したのが由来とされている。

 永い間、「神のおわす地」として、人々の訪れを見守ってきた同社だが、「土佐の宮島」と形容されるほどその景観は美しく、入りくんだ浦ノ内湾は静かな波のさざめきを見ることができる。日が昇る午前中は水面がキラキラ輝いて反射し周辺が白やんでよどみのない美しさに包まれ、夕暮れ時には鳥居の向こうに覗く虚空蔵山を照らした夕日のオレンジが清楚な本殿まで伸びて、えも言われぬ幻想的な風景へと趣を変える。


 現在、この由緒ある社殿を受け継ぎ守るのは、宮司を務める森田さん。この静かで穏やかな地でじっと、多くの参拝客を出迎えてきた。「以前は無かった須崎市道も神社まで延びて訪れる人も増えましたが、この景色は何も変わりません。いにしえから人々がそうしたように、海風に吹かれ、一言主大神に愛された横浪三里と呼ばれる景色を眺め、ここで心をほぐして欲しい」と、訪れる人の幸せを願う。

 縁結びの神としても名高い社殿には、近年、県内外から女性を中心に参拝客が増加。縁結びを神に祈り、おみくじで運勢を試し、海に向かってシャッターを切る、そんな光景を目にする機会も増えた。森田さんは最後に「鳴無神社」ならではのこんな楽しみ方を教えてくれた。「ここのおみくじは水に溶けるから、おみくじに想いをしたためて海に流してください。きっと英気が養われますよ」。