「こいのぼりの川渡し」の由来 約束のこいのぼり

「子どもたちの健やかな成長と清流四万十川を守る」、そんな目的のもと 昭和49年に始まった「こいのぼりの川渡し」。そのルーツをたどると、 青年と少年が交わした「一つの約束」があった。

春の訪れを告げるこいのぼりと
世代を超えて受け継がれる約束

 暖かな春の陽気に包まれる4月中旬、四万十川では咲き誇る花々に負けず劣らず色鮮やかなこいのぼりの群集が姿を見せる。まるでコイが空を泳いでいるかのような雄大な光景が話題を呼び、今では全国各地で開催されるようになった「こいのぼりの川渡し」。発祥の地である四万十町十川(とおかわ)地区で、そのルーツをたどると十川体育会の青年が少年と交わした「約束」があった。  始まりは、十川体育会が指導するスポーツ少年団で練習をしていた子どもの一言がきっかけとなった。「最近は僕らぁが大きくなったき、家でこいのぼりを揚げてくれん」。いじけているかのようにも取れるこの発言を聞いた青年が「じゃあ、おんちゃんたちが揚げちゃう」と約束を交わした。船で川を渡り、川を挟んだ山々にロープを結ぶ。そこに町内から集めたこいのぼりをつるしていくのだ。時代とともに1本のロープは2本に増え、対岸へのロープの受け渡しをラジコンやドローンが担うようになるなど、準備はより効率的な方法に生まれ変わってきた。だが、変わらず残り続けているのはこいのぼりに込めた「子どもたちの健やかな成長を守る」という思いと、こいのぼりを楽しみに待つ子どもたちの姿。あの日少年と交わした約束は40年以上守り続けられ、成長した子どもが次世代の子どもへ、先輩から後輩へと受け継がれてきた。  最近は近隣の保育園児が現在の会場「こいのぼり公園」に散歩で訪れ、見学していくのだとか。これからも多くの町民の支えにより、約束が守られ続けるのだろう。