和の心を現代に紡ぐ

着物と伝統芸能を織り交ぜ高知から全国へ

 高知に拠点を置きながら、第一線で活躍する伝統芸能の演者や夫人らと深く関わり、業界でその名が広く知られている美馬勇作さん。もともと大の「芝居好き」「着物好き」ということもあり、若かりし頃からのご縁がつながって今日に至ったそうだが、そんな中でも美馬さんが特別な思いを寄せる2人の女性がいる。一人は、高知市にあった京呉服「三條」の社長、山脇初子さん。実家である「美馬旅館」が代々三條と付き合いがあったこともあり、高校生の頃から三條に出入りしていた美馬さんは、持ち前の感性や才能を社長に見出され、やがて三條で働くようになる。「三條、そして社長とは劇的な出会いでした。東京・銀座の有名店にも劣らぬ一流の品、一流の仕事に触れ、社長直々に三條イズムをたたき込まれたおかげで、今の私ができていると言っても過言ではありません」。

ごふく美馬-サブ写真01
創業20周年記念プロデュース公演より。松本幸四郎(十代目)さん市川染五郎(八代目)さん父子による「連獅子」。


 そしてもう一人が、歌舞伎役者「高麗屋・松本白鸚」を陰で支え続ける妻・藤間紀子さんだ。藤間さんとの出会いは三條で働く前、二十歳から2年間、東京の国立劇場で美馬さんが働いていた時にさかのぼる。歌舞伎や日本舞踊の、一流の演技、話芸、衣装を間近に見られるとあって熱心に仕事に打ち込んでいたところ、松本幸四郎(当時は市川染五郎)さんを紹介されて食事をする仲になり、それからほどなくして母である藤間さんともつながったのだそう。「東京から高知に戻って三條で本格的に働くことになった時、それを紀子奥様に伝えると『一度着物を見せて』と。早速劇場にお持ちして、その時初めてお求めいただいたのが、当時デビューしたばかりの松たか子さんの着物でした」。その後も、女性誌「ミセス」の中で藤間さんの対談相手として抜てきされたり、東京での展示会を後押ししてくれたりとお付き合いは続いた。「紀子奥様には東京で展示会をする機会を与えていただき、そのおかげでお客さまが広がりました。この方無くして今日はありません」。  実は美馬さん、小学校低学年の頃には杉村春子さんや山田五十鈴さんら、名女優の粋な着物姿に魅せられていたというから、その熱意は筋金入り。そんな幼少期の記憶や青年期の経験もあって、これまでの自分を築いてくれた伝統芸能界に恩返しがしたい、また着物を着て芝居を見る良さを知ってもらいたいと、平成20年から行っているのが「ごふく美馬 伝統芸能の夕べ」。歌舞伎俳優や和楽器奏者を高知に招き、趣向を凝らした公演を年1回のペースで行っているのだ。「芝居も着物も『本物』を見て、触れて、そして着物の場合は着てみないと、本当の価値が分からないものだと思います。敷居が高いと思われがちですが、この素晴らしい世界観を多くの人に知ってもらい、日本が誇る伝統をつなげていけたらと思っています」。


着物で町おこし〜「大正」の名を生かし、大正から日本の美しい着物文化を全国へ!〜

町おこし-メイン写真

春になると、四万十町大正地区では、町おこしの一環として「大正浪漫ふぁっしょんしょう」が開催される。地元の婦人部「大正美人の会」が主催となり、平成25年に始まったイベントでは、色鮮やかな着物を披露するファッションショーや着付け体験が行われ、老若男女を問わず多くの人でにぎわいを見せる。「原動力は生まれ育った大正を盛り上げたい、日本の大事な着物文化を継承したいという思い。着物ブームが訪れている今こそ、大正と着物の魅力を知ってもらえるチャンスが到来したと感じています!」、実行委員の山本さんはイベントを通してたくさんの人々にメッセージを届けている。