夏の遊びが 高知人のルーツ!
暮らしのすぐそばに自然がある高知では、こどもたちはどんなふうに遊び、 どんな経験をしているのだろう。山、川、海、それぞれのフィールドでこどもに 遊びの体験を提供している「遊びの達人」に話を伺った。
自然とのつながりを感じられる山 歩みを進めるたびに発見がある
「ここは森の入り口。まずは関心を持ってもらい、森の中へ一歩踏み出すきっかけになれば」。そう話すのは「甫喜ヶ峰(ほきがみね)森林公園」でインストラクターを務める佐藤さん。こちらはもともと県有林を整備した公園で、敷地内には森林学習展示館やキャンプ場があるほか、手付かずの自然が残るエリアがたくさんあり、そこでこどもたちはい ろいろな遊びや体験をしているという。森林率全国1位の高知でも、自由に遊べる山は意外と少なく、そんな中で「こどもを山で遊ばせたい」と親が連れてくるケースも多いという。「生き物を見つけたり、植物を見たり、森の中はただ歩くだけでも発見の連続です!始めは怖がっていた子も終わる頃にはニコニコして、何回も遊びに来てくれたりするんですよ。高知の豊かな自然がおおらかな人間性を育ててきたのだと思います」と話してくれた。
教えてくれた人/佐藤 知幸(さとう ともゆき)さん
「高知県立甫喜ヶ峰森林公園」の指導員。学校での座学やフィールドワークの授業も行っている。
森は気づきと発見の宝庫
こどもたちが夢中で遊びながら心身をたくましく育てる美しい川
四万十川流域で環境学習や安全管理を手がけている「四万十川財団」の事務局長である神田さんは、「高知の川って、まず泳ぐことができて、しかも捕った魚やエビは食べることができる。他県と比べるとスタートラインが断然違う」と話す。美しい川には、こどもの多様な好奇心を刺激するとともに、それを受け入れる懐の深さがある。「手長エビやサワガニを捕まえたり、アメゴ釣りをしたり、気に入った石を探したり、カヌーや SUPをしたり。服をびしょびしょにしながらいろいろな川遊びをすることが、こどもにとって大事な経験になるんだと思います」。そんな川が大好きな「川ガキ」について、神田さんは思うことがある。「川ガキたちって、昔は特に、溺れかけたり、浅瀬に帰れないといった、こどもながらにピンチを乗り越える経験もしているんです。知識だけじゃない、心身のたくましさみたいなものも、川は教えてくれるんじゃないでしょうか」。
教えてくれた人/神田 修(かんだ おさむ)さん
四万十川流域の小学校などで環境学習の講師を務める。川釣りやエビ捕りなど、川遊びの名人。
「川ガキ」はピンチに強い
多様な生き物に触れることで育つ 命の大切さや海の恵みに感謝する心
訪れたのは「室戸ユネスコ世界ジオパーク」に認定された室戸(むろと)市の海岸。ゴツゴツとした岩場には多数の潮だまりがあり、高校生が夢中になって磯観察を行っていた。「磯には多くの生き物がいて、その多様性は人間にも当てはまります。個を尊重することの大切さや助け合う気持ちが、この活動を通して養われているのではないでしょうか」と話すのは「国立室戸青少年自然の家」で海洋活動を指導する垣内さん。これまで多くのこどもたちを見てきて思うことは、本物を見たり、聞いたり、体験することが学びにつな がるということ。そして自然の中の体験こそこどもにとって大切であるということ。 「このような自然環境はめったにない」と他の職員も口をそろえて言う高知の恵まれた自然。それぞれのフィールドで遊び、体験することが、こどもたちの心を耕し、豊かにしている。
教えてくれた人/垣内 洋介(かきうち ようすけ)さん
「国立室戸青少年自然の家」の企画指導専門職員で、現在はおもに海洋活動を指導。小学校教員より派遣。