土佐の名建築【お宿】〜長い歴史が 観光客の心に 郷愁を誘う〜

明治、大正、昭和、 平成を経て 受け継がれること6代
創業1891年(明治24年)、美馬家の家業として代々受け継がれ、128年の歴史を刻んできた老舗旅館。四万十川ブーム、お遍路ブームと時代のニーズに応え、窪川の町宿として栄えた。館内には、作家・林芙美子や、元首相・吉田茂など、数々の文人や財界人らの直筆の書が残されており、長い歴史を重ねてきた貫禄がそこかしこに。床材は栗の木、壁は土壁、天井は1本の木からわずかしか採れない高価な「柾目」の木材を、要所には四角く特殊加工を施した竹の柱を採用。

窓ガラスや障子の腰には、今では入手困難なモザイクガラスが張り巡らされ、建築当初の贅を尽くした佇まいが残されている。創業当初の明治の建物は解体され、現在の建物は昭和初期以降のものとなるが、明治時代より美馬家に受け継がれた先代らの審美眼が、家具、照明、掛け軸など館内の随所で生きている。
「ガラス1枚割れても買い替えの出来ない貴重なものばかり」という若女将の言葉通り、今は無き職人技を感じる建築材が至る所で風格を漂わす。