高知県史(自治体史)とは?
高知県について伝え残されたさまざまな資料を調査し、本県の歴史を詳細に記したもの。郷土の歴史を知る、大切な手がかりだ。
東京大学史料編纂所で行われている史料調査の様子。井上聡さん(東京大学史料編纂所准教授、右)と田中勇作さん(立教大学院生、左)の姿も。
調査のデジタル化が進んでいます!
新しい高知県史では デジタル化が キーワードのひとつに!
高知県史専門部会のうち古代・中世部会の部会長を務めるのは、「東京大学史料編纂(さん)所」の井上聡准教授。「新しい県史は、書籍からデジタルへとメディアが変化していく時期の県史として、全国的な試金石になるだろう」と話す。
資料編の編さん作業では、史料の原本を網羅的に集め、収録することが基本。現存する原本は、カラーデジタルの写真撮影を行い、電子データとして残す。また、大規模な災害等による史料の損失に備えるためにも、史料の目録を整備し、画像やテキスト、人物・地名などを含めたデータベースを構築することも重要だ。史料を電子化することで、例えば、マップと組み合わせて、身近な場所の歴史を分かりやすく解説することもできる。観光や教育に活用するなど、今後のさまざまなアイデアも語ってもらった。
東京大学史料編纂所で 土佐の歴史を伝える 人々の思いに触れる
古代・中世史の手がかりとなるのが、江戸時代に収集し編さんされた史料が載る前回の高知県史だ。東京大学史料編纂所には、これら史料の複製などが収蔵されており、その調査にあたっている田中勇作さんは、「当時の人々が史料の収集にかけた思いを感じます。土佐国は『遠流の地』とされ、隔絶されたイメージもありますが、史料には荘園の地名などもたくさん出てきて、朝廷・貴族の経済的基盤となっていたことも分かり、その二面性が興味深い」と話す。一方で、荘園・公領の現地で作成・使用された「地下(じげ)文書」や、神社仏閣に残る経典類など、前回の県史では十分調査されていない史料もある。井上部会長は「それらも組み合わせて、より重層的に古代・中世史を描きたい」と話してくれた。
史料編纂所図書室に並ぶ史料
第六回 東京大学史料編纂所
史料編纂所の役割は、日本に関する史料を収集・研究し、編さんや出版を行うこと。その範囲は、古代から明治維新の時代まで。近年では、歴史情報データベースの構築や画像史料の解析といった、新たな事業も展開している。
原本が失われている史料の模写(「堀内文書」、 長宗我部元親判物)東京大学史料編纂所所蔵影写本。
修復用の土佐和紙を選ぶ、 技術専門職員の高島晶彦さん。
日本の史料編さんをリード 史料保全で土佐和紙が活躍
東京大学史料編纂所は、国内外に存在する様々な史料を調査し、複製や模写、写真撮影といった手段で収集に取り組んでいる。明治34(1901)年から刊行してきた史料集は、現在では1200冊近くに。既に原本が喪失した史料もあり、高知県史の編さんでも、その活用が欠かせない。所蔵する貴重な原本史料や写本類の修復現場では、驚くことに高知県で生産された土佐和紙が活躍。特に土佐市の江渕栄貫(えぶちえいかん)さんが手漉きした和紙は、原本に近い色や薄さ、手触りなど、細かく対応できる唯一無二のものだ。職人の高い技術力が、貴重な史料を次代につないでいる。
東京大学史料 編纂所の外観 (東京都文京区)