釣り方にこだわる土佐の海の男たち

豊かな海の幸を育む太平洋に面した、全国的にも漁業の先進地として知られる高知県。 陸へと海産物をもたらす土佐の漁師たちの仕事には、独特で多様な文化があるが、その一方で、担い手不足や高齢化を憂う声も一層厳しくなっている。 漁師という仕事に目を向けるきっかけになるべく、「土佐の漁師文化」を訪ねた。

土佐の漁師
自然相手の仕事

土佐清水市の窪津漁港を拠点に、30年以上もの間、漁業を営んできた山﨑勝志さん。仕事場は、足摺半島をはるか遠くに眺める海の上。

カツオはもちろん、一匹40kgを超えるキハダマグロを釣り上げる腕前は、長年にわたって土佐の漁業を背負ってきた、まさに生粋の海の男。漁師らしい独特な話ぶりでこう語る。「メジカを生き餌に使う、土佐清水の一本釣り漁師らもそうだけど、高知はそれぞれの漁港ごとに、独特なものがある。

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山崎さんが実際に手作りした漁具。

昔の地元の漁師が、その海に合った釣り方を探って編出して、それが商売になってきたね」。厳しい自然相手の仕事だからこそ、漁師に常に求められるのは、創意工夫だ。「高知の漁師は釣り方にもこだわる。僕も漁具は手作りしゆうし、遊漁の道具らあでも、ネットでよお見ゆうよ。仕事で使えんかって」。土佐の漁師は、より釣果を上げるために、試行錯誤を続けているのだ。新しい道具やより良い方法があれば、貪欲に取り入れる。

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生き餌のメジカも自ら釣り上げる。

漁のやりがいは
ずっと変わらない


人間では絶対に切れない硬さの糸を、キハダマグロは切ってしまう。まだ薄暗い海上で行われるのはまさに格闘であり、言葉では言い表せない凄みがある、命のやりとりだ。そんな仕事を終えた山﨑さんは、漁師の高齢化や、海の様子が変わってきたことを話す。

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大物となれば1匹ごとに取引される。

「船の数は減りゆう。昔は日本一の漁場とも言われた清水でも、ここ5、6年で取れんなってきた魚もある。それでも漁師の楽しさを伝えていかんといかん」。まだまだ現役の漁師として、活躍を続けていく。

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