和の心を現代に紡ぐ2

土佐和紙の伝統を生かした土佐紙布

 木綿を経糸、土佐和紙を緯糸にして織り上げる「土佐紙布」が誕生したのは、平成31年春のこと。日本の伝統文化と、土佐の伝統工芸を組み合わせた紙布は、着物用の「帯」に仕立てられた。「手紡ぎと手織りの表情に癒やされ、手触りも締め心地も軽く、ナチュラル。思い通りの作風に仕上がり、感動もひとしおでした」。発案者の石原さんはうれしそうに当時を振り返る。  もともと素朴で優しい風合いの手仕事作品が好きだった彼女は、結婚を機にこの世界に入ってからも、手仕事の技が光る着物や小物に引かれた。また、いの町在住だったことも重なって土佐和紙と呉服を組み合わせた「いいもの」ができないかと、いつしか考えるように。そんな折見つけたのが、紙糸を織り上げる紙布。「存在は知っていましたが、現物に触れたのはその時が初めてでした。自然の素材と手仕事の風合いを感じて、これで帯を作れば面白いなとイメージが湧いたんです」。   そんな構想から、イメージ通りの作品に仕上げるために試行錯誤を繰り返すこと、実に5年。「ひだか和紙」が手掛ける、透明かつ粘り強さを兼ね備えた典具帖紙と、福井県在住の工芸作家・竹内康子さんとの出会いによって、「土佐紙布」は完成した。そうして、土佐紙布を使った第1号の商品としてできあがったのが、女性用の名古屋帯と男性用の角帯。今後は布小物を仕立てたり、機械織りでも作れるようにならないかなど思案中の石原さん、「より多くの方に土佐紙布に触れていただき、土佐和紙、そして着物の素晴らしさを知ってもらいたいですね」。


着物を新たなかたちにリメイクして残す

めろでぃー-メイン写真

 子どもの頃から日本舞踊を習い、また何かの折に着る機会も多く、着物は常に身近な存在だったという桑名さん。今から約40年ほど前に高知市内に衣料品店を立ち上げ、そして現在は高知市はりまや町のお店でアンティークの着物の販売や着物のリメイクを手掛けている。「着物を捨てたという話をよく耳にします。普段着として着物を着ていた世代が高齢になり、自分では着られないし保管するスペースも無く、結局捨ててしまうという人が多いんです」。そんな話を聞くたびに、どうにか残すことはできないかと考えるようになり「着物のリメイク」にたどり着いた。  店に並ぶのは、大正時代や昭和初期に作られた色鮮やかな着物をはじめ、コート、ワンピース、バッグ、クッション、傘まで、着物や帯をリメイクした品がズラリ! 洋服はどれも普段着として着られるものばかりで、着物ならではの柄が生かされている事はもちろん、軽くて着やすいと機能性も兼ね備えているのだとか。現在は毎月30着ほどを仕立てるそうで、実際に着物をリメイクした方からは「母がそばにいるよう」「親戚一同で涙ながらに故人を懐かしんだ」など喜びの声が続々と届いているという。「できれば着物をそのままのかたちで受け継いでもらうのが一番なんですが、現代ではどうしても難しい面はあります。だったら思い切ってリメイクしてでも残してもらいたいんです。着物にはその時代の文化や豊かさが反映され、着ていた人の思い出もたくさん詰まっていますから。眠っている着物がないか、一度ご実家のたんすの中をのぞいてみてください」。