ここは高知県の西の端、暮らす島民は今や20人あまり。
美しく澄んだエメラルドブルーの海が釣り人やダイバーの憧れを惹きつけてきた。
そんな鵜来島が今、島外からの熱いエールを受け沸いている。
これは小さな島に生きる島人の物語。
熱い想いが多くの人を動かした。

人口わずか20人の鵜来島に起こったドラマ
島を愛する人の想いが多くの心を動かした…

このストーリーの始まりは、今から約10年前。80代の先代から、島内で数少ない若手の一人・田中辰徳さんへ鵜来島の区長の仕事をバトンタッチしたことをきっかけに幕を開ける。「33才で島に戻ると多くの島民が老いていた。若い人もほぼいない。自分が引き受けるしかないと思った」。新区長となった田中さんは、右も左もわからないなか、若い人が島に住めるようにと動き始めた。連絡船の切符売りや役場の支所の仕事を民間委託にするよう働きかけを行ったり、空き家を活用した民泊業のサポートを行うなど、仕事づくりに着手。沖の島に訪れるアーティストの影響を受け「島外の人達の経験や視点から島を考えよう」と、竜宮学校という夏合宿を彼らと企画した。そうして、徐々に島外より訪れる若者が増え、島民との交流が始まった。しかし、高齢の島民と都会の若者…。一筋縄ではいかないことは多く、なかなか若者が島に馴染めない。これには、根気と時間を要した。


その一方で、島外在住の島出身者に「島のこれからを一緒に考えないか」と声をかけていた田中さんの想いに共感し、もう一人の男性が立ち上がった。島の外から島を支える団体「鵜来島を守る会」の会長・田淵満博さんだ。同会は島内外の協力を得ながら「お盆に帰郷する楽しみをつくりたい」と様々なイベントを企画。やがてその活動は、島一番の伝統行事の復活へ向けて動き始める。資金と人手不足など課題が山積するなか、伝統の祭りの担い手を新聞やクチコミを通じて呼びかけた。その結果、400人が賛同し出資の名乗りも相次いだ。そうして3年前、鵜来島にとって特別な伝統行事であった「春日神社の秋祭り」が復活を遂げた。

また、「島の環境を変えたい」と島への移住を決めた若者もいた。画家として県内外で活躍していた西内新一さん。「美しい海の自然に圧倒された。ダイナミックな珊瑚礁のあいだを泳ぐイシダイやナンヨウハギといったカラフルな魚たち。ふいに現れるキビナゴのカーテン。あたたかく迎えてくれる島民もいる」。目の前に広がる景色に衝撃を受け、釣りやシュノーケリングなどを通して島の魅力を体験してもらおうとアクティビティガイド「うぐるBOX」を立ち上げた。島のUターン者である田中稔子さんも、「クルマも走らんしだれも邪魔せん。島に来た人にはここには何かあるということを感じて欲しい」と一念発起し、クラウドファンディングに挑戦。思いに共感した多くの人から50万円を超える支援を受け、今夏、鵜来島初のカフェ「しまの灯り」をオープンする。

鵜来島の海

これは、人口わずか20人の小さな鵜来島に起こったドラマみたいな本当の話。島の挑戦はまだ始まったばかり。島民と移住者がとけ込める居心地良いコミュティを目指して、島民らの奮闘は続く。