石鎚山を主峰に1800m級の山々が連なり、高知県と愛媛県の県境に延びる石鎚山系。 それらの山々を貫く旧寒風山トンネルを起点に、西へ峰沿いに続く町道が通称「UFOライン」。 四国山地のパノラマが広がる絶景ロードに魅せられ、この地に移住した青年がいる。 彼は自転車をツールに、UFOラインと自然を生かした地域おこしに取り組んでいる。

普段味わえないサイクリングを契機に 四季を問わない遊びを提案していく

 いの町道瓶ヶ森線=通称「UFOライン」。この奇妙な呼び名になった理由は諸説あるが、ここから見える風景が、まるで空を飛ぶUFOから眺めたかのような絶景であることは間違いない。「西日本で一番標高が高い道路とも言われています」と教えてくれたのはNPO法人K2代表理事の森俊樹さん。UFOラインの最高点は1690m。四国山地の山々はもちろん、晴れた日には遠くに太平洋も望める高度感は、まさに天空にいるかのようだ。  この風景に魅せられて愛媛県新居浜市から移住してきた森さん。学生時代からバイクで全国200ヶ所以上の林道やスカイラインをツーリングしてきた。それでも身近にあったUFOラインを改めてツーリングした時には、「こんなすごい場所に道があるんだ!」と驚きを覚えた。

 いの町の地域おこし協力隊として移り住んで、取り組んだのはUFOラインを走る自転車イベント。「バイクよりも自転車の方が多くの人が楽しめるはず」と考えた森さんは、2016年「瓶ヶ森ツーリングクラブ」を立ち上げ、同年10月に高低差980m、距離約60kmを走破するツーリングイベント「UFOラインアタック」を開催。


 当時の参加者はわずか20人ながら、「走っていて常に絶景が楽しめた」と参加者からは好評を博した。翌年の第2回目からはいの町観光協会もバックアップ。UFOラインを自動車通行止めにして、200人が参加する大規模なものへと成長する。「車を気にせず走れる、非日常空間を楽しめるツーリングです」と森さんも胸を張る。

 同イベントの運営だけでなく、冬季封鎖期間におけるUFOラインや周辺の森を活用したアクティビティなどを発信するために、2019年、森さんは現在のNPO法人K2を設立した。「ツーリングのベストシーズンは5〜10月ですが、霧氷が美しい冬も魅力的ですよ」。壮大な山並みの風景に、新緑〜紅葉〜雪景色という四季折々の変化が加わるUFOライン。ここを舞台にして、森さんが次にどんな挑戦をするのか期待が高まる。