須崎市で受け継がれてきた伝統の雪割桜。 2月の雪が降る中、ひと足早い桜吹雪をキャンドルが照らす。 それは、「若者に地元の良さを知ってほしい」という若者たちの思いによって 生まれた一夜限りのキャンドルナイト。 より若い世代の人々に、地元の名所が受け継がれてゆく。
濃いピンクの桜吹雪がライトアップされる一夜。 その幻想的な光景が若者の来場を誘う。
須崎市桑田山の「雪割桜」といえば、高知県では、ひと足早く春の訪れを告げる桜の名所として有名。まだ雪が降る2月の中旬から花を咲かせるため、地元の人々にその名で呼ばれはじめ、長きにわたって親しまれてきた。起源は、70〜80年前、愛媛県松山市の「椿神社」の桜の枝をもらい受けた地元住民が接ぎ木して大切に育て、保存会が受け継いできたものといわれている。山全体でおよそ1000本にもなる雪割桜が一斉に咲き誇れば、辺り一帯に独特な桃色や濃いピンク色の桜の花が舞い散り、幻想的な景色が広がる。 そんな雪割桜が近年、特に若い世代から人気を集めている。8年前から開催されている「雪割桜キャンドルナイト」という夜桜のイベントが発端になり、SNSで話題が沸騰。まだ寒い2月の一夜限りのイベントに2500人以上もの見物客が訪れ、ライトアップされた雪割桜にカメラやスマートフォンを向けては、撮影を楽しむ。
イベントを手掛けるのは、地元の若い世代が集まる「BOKKENT」という団体。近年では地元住民の老若男女が大勢協力して行われている。代表の堅田大輔さんはイベントに対する思いをこう話す。「実は自分自身、地元出身なのに、若い頃に雪割桜を見たことがなくて。訪れた時は、あまりの美しさに感動しましたね」。一般的に、若い世代ほど地元の良さに目を向けづらい。でも、「須崎は良いところだよ!」と胸を張って言えるようになって欲しい。そう考えていた堅田さんだからこそ、若い世代の参加を誘うイベントを実現できたのだろう。地元の小学生たちに竹提灯の絵を描いてもらったり、須崎総合高校の書道部に題目を書き下ろしてもらったり。失敗や苦労も多かったが、イベントを訪れた若い子達が「わあ、きれい!」と大声ではしゃいでくれた様子に報われたという。「胸を張って、地元の良さを紹介できる」そんな若者たちの手に未来へのバトンが渡された。