「日本最後の清流」としても名高い、高知県西部を流れる四万十川。 その支流の中でも最も透明度が高いと言われる黒尊川は、紅葉の名所としても知られている。 毎年11月頃になると鮮やかに色付いたカエデやモミジが渓谷の澄み切った河面に映え、 息をのむような美しい光景が広がる。

自分で体感することで自然との関わりを知る 興味の幅が広がる場所

高知県西部と愛媛県との県境に位置する黒尊神殿橋周辺は、紅葉シーズンになると多くの観光客が訪れる。渓谷にせり出すように色濃く染まった木々、渓流に落ち葉が浮かぶ様子はまさに絶景。その景色をより美しく演出しているのが「平成の名水百選」にも選ばれるほど透明度が高く、鮮やかな紅葉を映し出す黒尊川だ。ここには、川釣りやうなぎ漁、川遊び、野菜の栽培や稲作風景など、日常的に自然と共存する暮らしが今でも残っている。  昔ながらの営みが残ったこの地域の貴重性や魅力をより多くの人に伝えようと取り組むのが川村さんだ。普段は川の文化・風景を守るため文化行政に携わる傍ら、休日にも川へ足を運び水中を観察。「黒尊川ではテナガエビやアユ、ボウズハゼなどのめずらしい生き物が今でも生息し、行くたびに色んな発見がある。川が狭く浅いので子どもと一緒に自然を体験しながら学ぶには最適の場所ですよ!」とその魅力を楽しそうに話す。


そんな魅力いっぱいの黒尊川をPRするために制作したのが、川の流域を全長2mほどの地図にして、季節のパンフレットと共に折り込んだ「くろそん手帖」。開くと中はほとんど白紙で、川を訪れて実際に体験したことを絵に描いたり写真を貼って楽しむことができ、何度も来たくなるような仕組みが施されている。また、手帖を通して地元民と観光客との会話が生まれたり、実際に書き込まれた手帳を集め展覧会を行い、大人と子どもそれぞれの楽しみ方を共有したり、コミュニケーションツールの一つとしても一役買っていると言う。  「誰かと出会った記憶は綺麗な景色にも負けないくらい深い思い出として心に残ります。ぜひ訪れた際はこの素晴らしい自然と一緒にここで暮らす人と関わることで、この場所の豊かさを感じてもらえれば…」。今では貴重となった原風景はどこか懐かしく親しみを感じるもの。旧来の自然と人との関わりを知ることで、日常では知り得ない大切な何かを感じてもらいたい。