高知県の東北端、ちょうど徳島県との県境である東洋町・甲浦湾で、 その海の魅力を世界へ発信するため直向きに潜り続ける1人の水中フォトグラファーがいる。 今、世界からも注目を集める東洋町の海。 その自然とそこで暮らす人々の共存を願い、新たな観光産業に挑んでいる。
地域の自然、文化、人々とそこに眠る 観光資源を発見するため…
「日本近海には4000種もの魚が生息しているんですが、高知近海ではその半数以上の魚が確認されているんです。これって本当にすごい事なんですよ!」。生き生きとした表情でそう教えてくれたのは、東洋町でダイビングショップを営みながら水中フォトグラファーとして海に潜る福井宣博さん。「高知県東部は西部に比べ観光業が少ないように思われるけど、知られていないだけで魅力は無数に存在する」と町の魅力を教えてくれた。 同じ高知県の海でもその環境や景色は様々で、黒潮が沖を流れる東洋町の海は、水温の高い海域と低い海域のどちらの魚も見られ、雄大なサンゴ礁を眺めながら熱帯魚と一緒に泳ぐことができる。元旦には全国のサーファーが初日の出を拝み、雨上がりの砂浜では空と景色が映し出された神秘的な光景が広がる。運が良ければダイビング中にサメの生態観測もできる。
そんな東洋町の海が昨今の環境の変化により大きく変化しつつある。温暖化や化学製品の流出で海の中のサイクルが乱れ、そこに住む魚の居場所が無くなりつつあるというのだ。そんな状況を危惧し、ダイバー、そしてフォトグラファーとして、水中の様子を撮影し、サンゴの研究者や地元の漁師に海の状態を伝えている福井さん。その活動は多岐に渡り、本来の海のバランスを人の手で取り戻そうとする全国レベルの事業にも参加している。 一方で、東洋町観光振興協会の会長として、この町の自然を活かした観光振興を推進し、県外から観光客を誘致するためのアイデアを模索。「先進国である日本にこの自然が残っていることは本当に貴重なことで世界からも評価されている。その素晴らしさを地元の方にも改めて知ってもらいたい。都会だから、すぐコンビニに行けるから豊かな暮らしだとは思わない。心が豊かになれるこの場所を自分にできる方法で見守っていければ…」。この町の可能性を信じて、大好きな海の魅力を世界に届けている。