知る人ぞ知る、迫力満点の祭り
百万遍祭(ひゃくまんべんまつり)
●土佐郡土佐町南川地区大谷寺 ●7月28日(日)
地元の男性たちが寺内の舞堂でわいわいと大きな数珠を持ってまわり続ける祭り。酒もまわって途中から転ぶ人も続出。近年は見物客も増え、さらに盛り上がりを見せている。
地元の底力がここに
四国の中央に位置し、自然豊かという表現がまさにピッタリの土佐町。町内の北側にある南川地区では、毎年夏に「百万遍祭」が行われる。南川の百万遍祭は、いつどのように始まったのか…、地元の人達にすら知られておらず、その起源は謎に包まれたまま。しかし、始まりが分からないほど昔から行われてきて、これまで地元の人達によって守り続けられてきたことは事実だ。祭りは毎年7月の土用入り後、初の日曜の午前0時より、しめ縄作りをとっかかりに幕を明ける。しめ縄を作ったあとは、タラの木で作った大きな数珠を男達が持って、夜明けまでくるくるとまわり続ける「朝繰り」。その後、一旦帰宅してひと休みした後に、午後1時頃より夕方まで舞い続ける「本繰り」。酒を飲みながら繰り続けるので、次第に酔いもまわれば舞堂より転げ落ちる。そんな光景もこの祭りには茶飯事だ。人力仕事ということもあって、女人禁制として代々行われてきた祭りだが、男だけが30名程、賑やかに繰り続ける様子は非常に見応えがあり、最近では、プロアマ問わずカメラマンもたくさん訪れているという。
伝統を守りたい…
南川地区長でこの祭りの主催者である竹政さんは、この「百万遍祭」を後世に残し続けていきたいと胸の内を語る。「この地区出身の者は、祭りに合わせて帰省するし、地元の人たちの拠り所にもなっている。昔から伝わるこの祭りをずっと守っていきたい。地元の年配の方はしんどいと言う人もいるけど、これからどんなに規模を縮小させても続けていきたい」。地域には高齢者が増え、現実、5年、10年先まで続けることが危ぶまれている。そんな一方で、地域支援員や行政の関係者、地域おこし協力隊など若い人たちも祭りに関わり始めている。「今後はこの祭りを若者に知って楽しんでもらうためにSNSも活用したい」と竹政さん。未来へ繋ぐための活動は続く。
四万十川の魅力を伝承したい
四万十大正あゆまつり
●四万十町大正「大正新橋」下の川原 ●8月18日(日)12時~ ※小雨決行、悪天候の場合は25日(日)に延期
四万十川で採れた天然あゆを使ったグルメコーナーや伝統の火振り漁、花火のほか、景品が当たるクイズ大会などイベント盛り沢山。地元民の熱い想いが込められた夏祭り。
四万十川がある限り!
「この場所で生まれ育ち、幼い頃は川でコロバシ(筒漁)を教えてもらった。そんな時代を生きてきた自分だからこそ四万十川の良さを発信したいと強く思う」。この祭りの実行委員長を務める市川さんは、今年で17回目を迎える「あゆまつり」を第1回から主導。祭りの主要イベントである、伝統の「火振り漁」のデモンストレーションまで自身が行う、エネルギッシュな人物。「歴史ある四万十川の文化を伝えたい」という思いから、祭りには地元の魅力をぎゅっと凝縮。「火振り漁」の他にも、「いかだレース」や四万十に、ちなんだクイズ大会など、趣向を凝らしたイベントを企画。飲食ブースでは、地域ならではの調理法や保存食を知ってもらうべく、天然鮎の美味しさを再発見できる多彩なメニューを、地元のお母さん達らが腕を振るう。
地元の人にも伝えたい
「この地域の文化を知ってもらいたい」、そんなひたむきな想いで祭りに携わってきた市川さんだが、自然相手な分、苦労も多いと話す。毎年、鮎が大漁に採れるとは限らず、鮮度の良い鮎を安く提供するのも容易ではない。それでも「美味しい鮎しか提供したくない」というこだわりに妥協は許さない。一方で、祭りは天候にも大きく左右される。昨年は、メインイベントとなる「火振り漁」の開始直前まで大雨が続き、その開催が危ぶまれた。しかし、想いが天に通じたのか奇跡的に天候が回復、約2500人もの来場者で祭りは賑わいを見せた。「全国から人が集まることで地元の人も喜んでくれる。この土地の素晴らしさを改めて実感できる場でもあるこの祭りを元気な限り続けて行きたい。そして今後は若い人が引き継いでくれれば…」。来た人だけでなく、ここに住む人も四万十川の魅力を想い起こせるこの祭りに、自信を持って挑んでいる。