四国のほぼ真ん中に位置する「さめうら湖」は、 70年代に建造されたダムによって誕生した。 かつて地元民にとって遠い存在だった湖は、 いまでは若者たちが地元愛を育む場になっている。。

西日本最大規模の広大なダム湖。
アクティビティ、スポーツ、そして若者の成長の場に。

 四国のほぼ真ん中に位置する山間部に「さめうら湖」が誕生したのは、1970年代のこと。西日本最大規模の貯水量を誇るダムが建造され、山あいの谷間をどこまでも続いていくような、広大な湖ができあがった。しかし当時は、ダム建設にともなって沈んだ村もあり、地元で生活する人々にとってダムはどこか遠い場所だった。  時は流れ1990年代、釣具店や移動式のボートの販売をしていた辻村幸生さんにとって「さめうら湖」は、憧れの場所。流行していたスポーツフィッシングの大会で訪れたり、ボートで湖面を疾走したりすると、小さい湖とは比べものにならないような、特別に大きいスケール感に圧倒された。その後、ウェイクボートやカヌーなどウォータースポーツを楽しもうと訪れる人々が徐々に増え、次第に辻村さんのなかに「さめうら湖を日本一にしたい」という思いが芽生えていった。 


そして2011年、「さめうらプロジェクト(愛称ラブさめ)」というNPOを立ち上げ、地元の人々をボートに乗せて湖を遊覧するイベントを仲間たちと重ねた。地元の人達にとって、ダムは遠い存在で、それまで湖面に出る経験がまったくなかったとあって、驚くほど喜んでくれる。以降、辻村さんは湖面はもちろん、自転車など湖畔を活用したスポーツイベントを通して「さめうら湖」と地元をつなぐイベントを積極的に打ち出してきた。 

そんな辻村さんが今最も大事にしているのは、地元の中高生や大学生。中高生を中心とした「Blue Lake(ブレイク)」という団体を支援しながら、若者が「自分は地域に愛されている」と実感できるような機会づくりに励む。「例えば、マラソン大会といった地元のスポーツイベントに若者が運営側として参加し、人々に喜んでもらう経験を学生時代に積むことができれば、たとえ地元を離れても、ここで生きることの価値がわかって帰ってきてくれるだろう」と信じて。「さめうら湖」はそのフィールドになっている。