特集関連企画 商店の魅力、見〜つけた!

看板娘に名物商品、常連客との会話――
つい足を運んでしまう、なぜか声をかけに行きたい気持ちになる商店。
地域にすっかり溶け込んだ〝よろず屋〟には、「ここだけ」の魅力があるのです。

01 みやむらの「ばんのうたれ」「味楽ぽん酢」

「ニンニクが※こじゃんと効いたあの“たれ”売ってくれん?」。ある日、お客さんがカツオのたたきではなく、たれだけを買い求めてきた。40年前に店主の妻が考案した、ニンニクとショウガをすりおろして酸味を抑えたたれは、「今までなかった味」と評判となった。
 そこで「ばんのうたれ」、ユズ酢を加えた「味楽ぽん酢」を商品化。パンチのある味のトリコになった人が続出した。野菜炒めの味付けやオイルを加えてサラダドレッシングなど活躍の場面が増えて、今やあらゆる料理に使えるオールマイティプレイヤーに!

有限会社 みやむら
土佐清水市三崎浦4丁目1-5

みさきかつて紀伊の国からカツオ漁やカツオ節の製法が伝わった地・土佐清水市。三崎の国道沿いにある「みやむら」は40年前に創業し、カツオのたたきは地元で愛されている。

02 ひなた屋の寿司

 海から遠く離れた山間地・大豊町。自家用車が普及するまでは海の幸が出回ることはあまりなく、せいぜい塩漬けしたサバくらいのもの。神祭や婚礼などのハレの日には塩サバの姿寿司が欠かせなかった。
 かつての味を今も伝える「ひなた屋」。開店前から並んで寿司を買い求めるお客さんもでき、昔ながらの姿寿司の他、ユズの皮を挟んだ焼きサバ寿司、ワサビを効かせた棒寿司、ナイラゲの寿司など、寿司のバリエーションも増えた。

ひなた屋
高知市大津甲2001-1/火曜定休

40年前に開店した「こんどうストアー」は食料品や日用品を販売する傍ら、「サバの姿寿司」が評判で、峠を行き来した人たちの手土産にも喜ばれた。娘の中島千江さんが2011年「寿司にあう料理で新しい店を」と、高知市大津にうどんと産直の店を開店した。

03 ふくどめのフカヌタ

木の芽が出だしたら、高知市弘化台の市場にフカが並びだす。高知でフカと言えば、サメ。冷蔵技術が発達していない時代、土佐山田町より奥の物部川流域では足の早い魚は敬遠された。そこで重宝されたのが、塩サバやフカ。今も、毎日フカだけを買っていくおんちゃんもいて「ネズミはコリッコリして、マイラよりうまい!」。フカの刺身はさっと表面を湯にくぐらせるが、身は生そのもの。こうすることで、冷蔵庫で1週間くらいは日持ちする。
 ヌタはニンニク葉がある寒いシーズンだけの限定品。生のニンニク葉を刻んで、白みそと酢であえる。「売ってくれ」と年中言われ、冷凍して使ってみたが匂いが飛んでしまい、生の葉がある時期だけに戻した。淡泊なフカの身に、ピリっとしたヌタをべったりつけるとガツンとした味に。「ここにしかない」と、高知市内からフカヌタを買いに訪れる人もいる。

フレッシュマートふくどめ
香美市香北町小川151-1/日曜定休

米屋だった店を1986年に生鮮食品を扱う店に。手づくりの田舎寿司やお惣菜が人気。2015年に店の隣にコミュニティスペースをオープンした。


COLUMN  マーケットのある日 【フレッシュマートふくどめ編】

「ポイントカード、お預かりいたします。」​
入口のガラス戸にかかるテレホンカードのポケット。よく見てみると、ポイントカードが30枚! 10年くらい前にポイントカードサービスをはじめたものの、「家族でまとめて貯めたい」「忘れてきた」というお客さんが続出。「ほいたら置いておきましょうか」ということで、レジ横に並べることに。54円で1ポイント、500ポイントでお買い物券が出るが、渡し忘れたお客さんの「お買い物券」も一緒に収納。「そろそろ貯まったろうかー」とぎっちり聞いてくる常連さんも。

04 松田食品のポテサラ

 店主自ら市場で魚を競り落とした新鮮な刺身がずらりと並ぶ店内。「うちの主人は松田のポテサラやないと!」。魚の味にうるさい須崎の人たちが密かに愛するのは、なんとポテトサラダ。ほかにも、から揚げをはじめマカロニやスパゲティサラダ、煮物や白あえなど、お惣菜が豊富。
 今晩のアテを目当てにきた男性客は、真っ先に刺身コーナーへ足を運び、メインディッシュが決まったあとでお惣菜コーナーを物色。女性客に比べて滞在時間が短く、鋭い目つきでお買い物をして帰っていく。100円台のお手軽価格も受けて、熱いリピーターも続出中。駐車場は狭いが、回転が速いため混雑しない。


松田食品
須崎市妙見町5-14/日曜定休

須崎市多ノ郷の松田食品。かつては荒物なども取り扱う店だったが、30年くらい前から食品を扱うようになった。不景気の波が押し寄せた10年ほど前、「私らの売りは、和食や!」と、魚とお惣菜をメインにした店に転換した。

COLUMN  マーケットのある日 【末広ショッピングセンター編】
電話で激怒​​
ある時、お届け便の注文の電話を取った従業員が激しい口調でまくしたてている。「もう、あたしは知らんで! 前もそれで倒れたろう! もう飲んだらいかん!!」。電話を切ったあと事情を聴くと、糖尿病を患っているお客さんが、1.5ℓの甘味料を多く含むジュースを2本注文したという。毎日電話で注文を受けるうちに、家族のような関係になり、体調を心配してついつい強く言ってしまったようだった。結局お客さんはジュースの購入を断念した。

05 しまんとハマヤのカツオパテ

 「焼き節って、おじさんくさくない?」。藁でカツオを焼きながら、ふと疑問が浮かんだ。「おしゃれな洋風のカツオ商品を!」。
 一本釣りのカツオを使用し、ニンニクを効かせた無添加調味料と、朝摘みのローズマリーをたっぷり使ったEXバージンオイルの2段階で風味をつける。焼き節特有のパサパサ感のない、しっとりした食感の「オリーブかつお」に仕上がった。血合いや筋を丁寧に取り除いた「パテ」はオリーブの実の食感が新鮮。「生クリームやクリームチーズを混ぜると、また違ったディップとして楽しめます」。

四万十よろずマーケットしまんとハマヤ
四万十町琴平町476-1/1月1日定休

もともとは須崎の衣料品店だったが、窪川サティの食品館を担うことになりスーパー業界に進出。15年前には、「高知県を代表するのはカツオしかない!」とカツオの藁焼きたたきをメインとしたレストランを高知市の花街道沿いにオープンした。藁焼きたたきの実演にこだわり、年30回、関西・中国圏のスーパーに飛び回る。

05 Kマートのあなごうせんべい

 地元では「あなごう」と呼ばれる安芸市の伊尾木洞。伊尾木洞保存会と地元菓子メーカー「さくら堂じゃぱん」が開発した「あなごうせんべい」は、入河内地区の煎茶を粉砕して練り込み、ほんのりしたお茶の香りが特徴。洞窟やその周辺の維持管理のため、商品代300円のうち一部は伊尾木洞保存会に寄付する仕組みにした。

Kマート
安芸市伊尾木177-9/日曜定休

安芸スーパーで勤めていた菊池喜一郎さんが20年前に独立して開店した。あなごうせんべいの販売だけでなく、駐車場を貸し出したり、店内に洞窟の写真を飾ったり、東部博効果で、あなごうの拠点になりつつある。

07 遍路の駅の夫婦(めおと)どら

「お遍路さんが一休みできる店に」。四国八十八カ所霊場の25番・津照寺(しんしょうじ)前の遍路の駅は、焼き立てのどらやきが名物。定番小倉あんのほか、ゆず、おいも、もち、くり、マーガリンなど多彩なバリエーション。小倉あんに生クリームを加えて、冷凍した「ひえひえどら」も人気。観光客だけでなく、地元のお客さんが仏壇のお供え用にも買っていく。
遍路の駅 夫婦善哉
室戸市室津2605/1月1、2、3日定休

1963年にスタートした室戸スーパーマーケット。室戸ではデパートのような存在で、店内で焼くパンが人気だった。8年前、津照寺前の店舗を改装し、遍路の駅夫婦善哉で再スタート。食品類を売るブースを少し残し、店の半分を食堂にした。

COLUMN  マーケットのある日 【大月コモンズ編】

輪投げで大フィーバー!​
​ 「あんたも投げて※みたや~」「わー、うまいねぇ!」。大月町唯一のスーパーマーケット「大月コモンズ」の店の前には、なにやら真剣な目つきの主婦。「ほっ!」とかけ声をあげて輪を投げると、すぽっとはまった。  「はい1本! 洗剤、大当たり~!」。ぐるりと観客が取り囲み、「すごい~」「私も※やってみろう」と挑戦者は後を絶たない。  使用するのは、MIZUNO公式の競技用の輪投げ板。100円払えば輪を5本貸してくれ、1本から4本まで景品がランクアップし、5本入れば全部プレゼント。1本も入らなくても、120円のたいこまん(大判焼き)が残念賞。毎回100人以上が参加する。3回投げてどっさり景品をもらったお客さんは、ほくほく顔で帰っていった。

土佐弁講座
こじゃんと:すごく/ぎっちり:しきりに/〜してみたや:〜してみてよ/やってみろう:やってみよう