01. 家をシェアするシェアハウス

空間を共有することで生まれる繋がりは、お客文化にも似た空気感をつくりだす。一つ屋根の下で日々の暮らしや時間を共にするって奥深い!

いろんな人がいろんな時間を共有し、繋がり、助け合い、楽しむシェアハウス。中でも「LuLuLu(ルルル)」は、シェアハウス、ゲストハウス、カフェが同居する進化系シェアハウスで、個性も年齢も国籍も違う人たちが集うことで生まれる出会い、発見、刺激の連続!「シェアする面白さ」を具現化し、そこには土佐に昔から伝わる「お客」文化にも似た、微笑ましくも濃厚な光景が広がっている。

「皿鉢」のようにいろんな要素と人が混在!

「LuLuLu」を切り盛りするのは元吉さんご夫妻。旅行代理店、カメラマン、地元タウン誌編集長という経歴を持ち、高知のマニアックなネタから旅に関するあらゆる情報まで知り尽くしているご主人と、元学校給食の調理スタッフという奥さん、まさにこの複合施設にはもってこいの2人があたたかく迎えてくれる。「コンセプトは住む、泊まる、食べる、学ぶ、が1カ所で楽しめる場所。そういった性質上、入れ替わり立ち替わりいろんな人がやって来て、毎日が新鮮で面白いですよ」とご主人。そのコンセプト通り、シェアハウスで暮らす人、ゲストハウスの宿泊客、カフェのお客さん、定期的に開催されているワークショップや教室、イベントへ参加する人と、まさにいろんな要素と人が混在しており、それはまるでひとつの大皿の中にいろんな料理が隣り合う皿鉢料理のようなにぎやかさ。

時には「おせっかい」も!それが高知流のおもてなし

根っからの高知人である元吉さん夫妻は、大の「お客」好き。そして、こんなにもいろんな人が出入りし出会いに溢れたここは、「お客」をするのにうってつけの場所といえる。月2回ほど店内で開催されるイベントの後は、自然な流れで料理とお酒を囲んだ宴会が始まり、海外からのゲストが多いときはみんなで連れ立って街へ飲みに出かけることも。そして特徴的なのは朝のモーニングタイム。ゲストハウスの宿泊者が観光の行き先を探していると、カフェのお客さんが良い意味で「おせっかい」しておすすめの場所を教えてあげたり、さらにそこへ朝ご飯を食べに下りてきたシェアハウスの住人も加わって小さなコミュニティが生まれる。人と人が自然につながっていく光景が当たり前のように見られるのも「LuLuLu」ならではだ。

自然に人が繋がり、広がるコミュニティ

音楽もまた、「LuLuLu」で行われるイベントや宴会に欠かせない要素のひとつ。例えばギターを弾き始めた人がいれば誰かが歌を口ずさみ、時にはみんなで合唱し、海外からのゲストが自国の踊りを披露したことも! ひとつの場所でいろんな人が食と酒と音楽を共有する…。ここでは、高知の各所で行われてきた「お客」の風景が、「LuLuLu」を通して独自のスタイルとなり確立されている。そしてこの空間をシェアした人たちは、身を以て体感したあたたかさに心を寄せてリピーターとなり、また違う人たちと繋がっていく。「LuLuLu」をきっかけに生まれた繋がりの連鎖は、脈々と広がっているのだ。この8月でオープンから丸2年。進化型シェアハウスは、まだまだ進化し続ける。人と人を繋げ、高知の「お客」文化を独自の路線で継承しながら。

語り継ぐ土佐の伝統慶びをシェアしたお客文化

はしご酒は当たり前、飛び込み客も大歓迎。慶びをシェアし想いをシェアし、繋がりを育む土佐人にとって大切な伝統文化。

人を招いて酒盛りをする宴会を土佐では「お客」と呼んだ。
繋がる気質はお客文化に起源する。

川村 一成さん
お客を今に伝える一人/川村 一成さん

「お客の条件はこの3つ。①個人の家で大勢でやるもの②歌や踊りがつきもの③時間無制限」と教えてくれたのは、お客を今に伝える一人である川村一成さん。「昭和40~50年代頃までは人を招いてお客をする場(宴席)が溢れちょった。40~50人が一つの家に集って、時間無制限で延々と宴会を楽しむ。お客の席で、よさこい節を誰かが歌い始めたら、やがて即興で作った歌詞にのせて、掛け合いが始まる。お客では、歌や手拍子や、箸拳や可杯(べくはい)遊びが途絶えんかった」と懐かしそうに当時を振り返る。そもそもお客は、結婚、出産、初節句、新築、厄除け、年祝いなどの祝い事の酒宴として、また、地域によっては、できた農作物への感謝の気持ちを表す神祭(行事)として正月と並んで大切にされていた。何軒もの家でお客をしていたため、はしご酒は当たり前、知らない客も大歓迎。「まあ、おいでおいで」と招き入れ、酒を酌み交わしては友達になる。若衆や娘のいるお客には喜んで参戦、老若男女が交流を楽しんだ。親戚との繋がり、友人との仲を育むための大切な宴。繋がりを重んじる土佐人の気質は、お客文化に起源する。

県外では、目下の人から目上の人への献杯はよく見られるが、高知では目上の人が目下の人に「まぁ飲みや」と酒を勧めることも。