自由な高知人は朝も自由!
朝じゃなくてもモーニング
「時間スタイルを 気にしない」 おおらかさが ここにある
喫茶店のモーニングといえば、開店からおおむね11時頃までが提供時間。
だが高知では、ランチタイムが終わっても、午後3時のおやつの時間でも、さらには一日中モーニングを提供している店が珍しくない。
そこで注目したのは睡眠時間。高知県民の平均睡眠時間は8時間4分で、これは全国第5位(※)。つまり、高知県民はよく寝ており、朝起きる時間が遅い? これに合わせて、モーニングの提供時間も長くなった…?
一方、喫茶店の答えは、「細かいことは気にせんきねえ」。「お客さんが喜んでくれたら、それでかまん!」。高知県民らしい自由でおおらか、おもてなし好きな人柄が、独自のモーニング文化にも表れているのかも。(※)総務省統計局が行った「令和3年 社会生活基本調査」の結果によるもの。調査は5年ごとに実施されている。
「モーニングが ぼっちり(※)」
とランチで 注文する人も 多いんです。
※ちょうど良い、ぴったり
昭和51年創業 喫茶ノア 奈々さん
●モーニング提供時間:7:30〜15:00
手作りにこだわる喫茶の、手作りあんこが評判のモーニング。
ビジネス街である高知市知寄町にある「喫茶ノア」。
かつては息つく暇もないほど忙しかったそうだが、モーニングの客がぱったり来なくなった時期があり「ほいたら、いっそ終日出してみようか」と始めたのが、今のスタイルの原点に。
店主のお孫さんで、四代目にあたる奈々さんのSNSをみて、若者も多く訪れている。
時間を分けるのが 面倒になっちゃって(笑)。
昭和55年創業 orion 永野 恭子 (ながの きょうこ)さん
●モーニング提供時間:7:00〜16:00
1日中オーダー可能で小腹が空いた時にもぴったり。
創業当時は午前とアイドルタイムに提供していたモーニングだが、「昼も食べたい」という声があったり、また「正直、提供する時間を管理するのが面倒になったがよ(笑)」と、終日提供するように。
昔は「ストロング」と呼ばれる深煎りの濃いコーヒーが人気で、今はさっぱりした浅煎りのコーヒーが人気だという。
夜まで頑張って働く人に食べてもらいたかったけん。
平成10年創業 花時茶 中山 環 (なかやま たまき)さん
●モーニング提供時間:7:30〜14:00
トーストの下に隠れているのは…?食べてからのお楽しみ!
宿毛市の「花時茶」が昼過ぎまでモーニングを提供し始めたきっかけは、ご主人の善仁(よしひと)さんが行きつけの夜の店で、「私たちは朝が遅いけん、モーニングは食べたことがない」と働く女の子が話していたから。
せっかくならと、一時期はモーニングメニューが100種以上あったことも!(現在は56種類)
朝は人それ ぞれ。モーニングの時間も 人それぞれ。
昭和52年創業 喫茶デポー 石川 咲来 (いしかわ さな)さん
●モーニング提供時間:8:00〜15:00(12:00〜13:00を除く)
教えてくれたのは...店長 中山 裕司 (なかやま ゆうじ)さん
和食派も洋食派も満足すること間違いなしのモーニング。
おにぎりや味噌汁にトーストという、和洋折衷のモーニングで知られる「喫茶デポー」。
「街では夜間に働く人もいる。朝が何時までかは人それぞれ」と、約15年前から遅い時間までモーニングを提供している。夜勤明けの人にも、これから夜勤に向かう人にも。高知の夜を支える、心強い活力源だ。
店主の人生を語る華やかモーニング
平成8年創業 舞夢喫茶店
●モーニング提供時間:8:00〜15:30
高知のモーニングといえば、提供時間の長さだけでなく、そのボリューム感も特徴のひとつ。
例えば、須崎市の「舞夢喫茶店」のモーニングは、お皿がトレーに収まりきらないほどの盛りっぷりだ。きっか 店主の人生を語る 華やかモーニング けは、店主・廣部(ひろべ)まりこさん自身の人生にあるそうで、食へのこだわりが強い家庭に育ち、若い頃は大阪で暮らしながら各地の専門店を食べ歩いてグルメ研究に励んだという。
故郷である須崎 に戻り、「舞夢」を始める時、その経験がストレートに活きたそう。
あふれんばかりににぎやかなモーニングには、高知人ならではの気前のよさと真心も添えられているのである。
①喫茶ノア(高知市)
四代にわたって女性陣が支える知寄町の喫茶店
「喫茶ノア」は、現店主の田所由美子さんの母が昭和51年に開業した店。以来、四代にわたって女性陣が中心となって店を支えてきた。昔は、大通りに出るまでの数十メートルの間に店が立ち並んでいたというほど、この辺りは喫茶店の激戦区だったといい、ノアもたくさんの人でにぎわいを見せた。焼肉、ラーメン、すき焼きといった喫茶店らしからぬ本格メニューの数々が、訪れる多くの人に愛されているという。※写真は日替わりランチ
②orion(高知市)
先代の思いをのせて今も現役で活躍中!
店に入ると出迎えてくれるのが、カウンター脇にある大きな水出しコーヒー器。昭和55年の開店当初から今に至るまで現役で使われており、「店を始めた母が、自分はハンドドリップで常に同じ味を淹れる自信がないし、これなら面倒にならんきえいろうと導入したものです」と息子であり現店主の永野さんは笑う。「お客さんには美味しいコーヒーを提供しつつ、少しでも手間は省きたい」そんな先代の思いと本音が垣間見えた。
③花時茶(宿毛市)
迷う時間も楽しい!種類豊富なモーニング
「花時茶」のモーニングは、「提供時間が長い」「ボリュームがある」に加えてもう一つ、「種類がとても多い」のが特徴。現在はモーニングのメニューだけで56種類ありそれだけでも驚きだが、最も多い時は110種類あったというから仰天である。「他の店がやってないことをやろうと思って始めたら、どんどん増えていきました」と店主の中山さん。どれにしようかな…と考える時間も楽しい。
④喫茶デポー(高知市)
新しい試みと改善を繰り返してきたモーニング
「自分が食べたいものはお客様も食べたいはず」という創業者の発想から、和洋折衷モーニングが誕生。当初は、トレーに隙間が見当たらないほど小皿をぎっしり並べて提供していたものの、配膳に苦労したり皿が欠けることも多く「だったらトレーを大きくしましょう」と店長の中山さんが改善し、今のスタイルに。新しいアイデアと改善を繰り返してきた「高知のモーニング」は現在で四代目になるという。