今夜はほろ酔い、まだ帰らん。わたしたちの寝る前喫茶

今夜はほろ酔い、まだ帰らん。
わたしたちの寝る前喫茶

音楽に読書におしゃべりに。人と文化をつなぐ、高知の夜の喫茶店。 自由であたたかな土佐の気風が、ここにも息づいている。

高知の夜喫茶には 音楽や文学のカルチャーと
ここにしかない心地よさがある

木馬

夜の繁華街でも目を引く、どこか懐かしい雰囲気の喫茶店。

洩れ聞こえる音楽や、やわらかな灯りが心地よく、「賑やかな酒の街」という印象が強い夜の高知でも、遅くまでやっている喫茶店は、カルチャーと自分らしい時間を楽しむ〝文化的な空間〟として、長年、高知の人々に愛されてきた。

木馬

「いつも決まった時間に訪れるお客さんが多いんです」と語るのは、ジャズ喫茶「木馬」の現店主・吉川里香(よしかわりか)さん。昭和38年、ジャズ喫茶ブームの真っ只中に誕生した木馬には、昔から通い続けているなじみの常連客も多い。中には仕事前に必ず立ち寄って気分転換をしていく近隣のバーのマスターや、仕事帰りに立ち寄って酒と本を楽しんでいく人など、1日のルーティンに「夜の喫茶店」を組み込んでいる人も少なくない。

木馬

人々の心を満たせる場所として〝心地よさ〟を提供し続けてくれているのも夜喫茶の魅力と言えるだろう。

カルチャーと コミュニティを求めて 夜喫茶に人が集まる

クレオール

夜の喫茶店は、音楽に映画、小説やまんがなど、カルチャーを愛する人たちが自然と集まり、語らう場所となっている。

クレオール

お店を営むマスターたちも文化人であり、出版社で働いていたオーナーが営むカフェ「クレオール」では、文学や音楽の話に、他のお客さんやマスターが加わって知り合いの輪が広がっていくといった、おしゃべりとお酒が好きな高知県民らしい光景もよく見られる。

クレオール

また、そんな輪は、実は夜の喫茶店のオーナー同士にも存在していて、木馬のオーナー・吉川さんも、休日はクレオールを訪れて、音楽や書籍、映画についてよく語り合っているそう。そんな人たちが営む空間だからこそ、サロンのような居心地の良さが生まれ、自然と人が集まってくるのだろう。

夜の喫茶店らしい落ちついた空間を生み出しているのは、コーヒーや料理の香りに、音楽と本、 そして、おのおのに自分らしいひと時を過ごす、リラックスしたお客さんたちだ。

「カフェ・ド・梵」には、お酒を飲んだ後に名物のシフォンケーキを味わいにくる、女性客の姿が目立つ。 オーナーの細川さんは「夜喫茶のオーナーは、自分も喫茶好きという人が特に多いね」と教えてくれた。

高知の夜に 「甘い選択肢」が 増えている

お酒を飲んだ後は甘いものが恋しくなる。実はこれ、アルコールの分解で体内の糖分が使われることから、血糖値を補おうとしている働きなんだとか。

そのせいか、お酒の愛好家が多い高知では、「飲み会後は甘いもので締める!」という声も多く、それを受けて近年、夜にケーキやパフェなどのスイーツを提供する喫茶店が増えているという。  

訪ねたのは、高知市の繁華街にある「Maison de Sweets Hattori帯屋町店」。「大人を喜ばせるケーキ」をコンセプトに、パティシエの服部伸也(はっとりしんや)さんが手がける本格スイーツが人気で、お酒を飲んだ後に夜喫茶を楽しむ人はもちろん、次のお店への手土産にケーキを購入していく人の姿も。

「夜でもホールケーキがどんどん売れるんですよ」と服部さん。高知の夜に新しい甘味を楽しむ文化が生まれている!?