国内の山には誰かしら所有者がいるもの。「山を走りたくても走れない」。そんな長年の課題に光明を見出したのは、「林業」での経験だった。
世界で広く愛されているマウンテンバイク。高知県内でも山の中を自転車一つで駆け回るアクティビティを楽しむ人が増えており、その冒険感と疾走感に魅了される人は後を絶たない。しかし、そこに至るまでの道のりは決して楽ではなかったという。
「これだけ広大な高知の山ですが、実際に自転車が走れる場所はかなり少ないんです」と話すのは、香美市で自転車の修理販売業を営みながら、マウンテンバイクの普及活動を行う道願さん。
現在は、同市の山中にコースを構え、その運営も行う道願さんだが、活動を始めた頃はこの問題にかなり苦労したそうだ。「マウンテンバイクを販売する側でありながら、勧められるコースがない」。それが悔しかったと当時を振り返る。そこで道願さんがとったのは「林業」という選択。
「まずは山を知る必要があると思ったんです」。 その後、山の仕事を通じて山をとりまくさまざまな立場の人・考え方と出会い、山は山主さんにとっては財産であり、林業関係者の仕事場でもあること。また、未来の暮らしを守る治水機能そのものであり、脈々と受け継がれている山の世界での暗黙のルールやしきたり、暮らしの知恵などさまざまなことを学んだ。
そして、山には昔の人たちが大切に築き上げてきた生活道が張り巡らされており、今でもきれいに残されていることを知る。これが大きなヒントとなり「山を使わせてもらうお礼に、山の整備をしてはどうか?」と活動をシフト。自転車で遊ぶ場所が欲しいという人を招き、山の中でアクティビティを楽しんでもらいながら、地域の文化や持続的な自然の在り方などにも関心を持ってもらえるような活動を展開。
それがライダーだけでなく山主さんや、地域にとっても“いい関係”となり、新しい山林の活用法として香美市・高知県の魅力の一つとなるように尽力している。