プライムトーク 漁師 ユーチューバー/須崎うみんちゅ 嘉征さん

高知の風土に育まれた「土佐人」たちは 今日もそれぞれの分野から「土佐の風」を発信

そこに新たな文化を重ねながら…

GUEST

漁師ユーチューバー/須崎うみんちゅ 嘉征さん

嘉征さん

少年時代 なりたくなかった 漁師の仕事に

  高知市から車で西へ、およそ一時間ほどの距離にある須崎市は、県内でも新鮮な魚が水揚げされる漁師町として有名だ。そんな須崎市で地元漁師として働きながら、およそ3万人もの登録者数を誇るユーチューバーとしても活躍している人物がいる。その名は、須崎うみんちゅ嘉征さん。「わざとらしくない、自然体の自分で、須崎の漁師の生活を伝えたい」と話す嘉征さんは、地元の若者たちを中心に、注目の人物になっている。  

嘉征さん

 「子どもの頃を振り返ると、ちょっとやんちゃでしたね」と話す嘉征さん。周囲の大人たちからは「ひとっちゃあ言うことをきかん」と言われ、将来を心配されたこともあったそう。「実家は祖父の代から漁師。でも当時、漁師になるのはイヤでイヤで」と笑う。それでも16歳頃から、時々船に乗って漁の手伝いをするようになったが、独特の魚臭さや、得られる収入を思うと、若者ながら「就労したい」とは思えなかった。  

転機がやってきたのは、嘉征さんが21歳の時。父親が脳梗塞で漁師を引退することになり、親族で船団を組んで営んでいたパッチ網漁に、危機が訪れたのだ。「父親と一緒に漁をしていた叔父さんから、いきなり『船に乗って!』と言われて。それから本格的に、漁師の仕事が始まったんです」。

嘉征さん 

 新庄川が流れ込む、美しい須崎湾が嘉征さんの母港。生まれ育った地元で漁師として暮らす日々は、「想像していたより楽しい」と話す。

漁師として学ぶ日々 やがて仲間たちと YouTubeに挑戦!

 船舶の免許こそ持っていたものの、嘉征さんが担当することになったのは、魚群を探しながら船団を導く誘導船。「漁で狙うシラスの群れがどこにいるのか、魚群探知機を見てもまったく分からなくて。最初の1、2年は、経験がある漁師さんに一緒に船に乗ってもらって、一から教えてもらいました」と振り返る。こみあげてきたのは、父親への感謝だ。「働く前は、夜中の4時まで遊んで帰ることもあったんです。そんな時は、すれ違いで仕事に出ていく父の姿を目にしていて。自分がやってみたら、本当に感謝するしかない、と思いましたね」。

 やがて漁師の仕事にも慣れてきた嘉征さんは、パッチ網漁の閉漁期に、得意の泳ぎを活かした素潜り漁まで手がけるようになる。20メートルまで潜水し、高級魚であるイシダイやクエを狙うと、想像していた通り、実に上手くいく。「YouTubeにアップされていた魚突きの動画なんかより、自分の方がうまいぞ」と、率直に思ったそうだ。そんな話を、地元の仲間たちとの飲み会の席でしてみると、火がついたように話が盛り上がり、なんとその場でYouTubeチャンネルをつくることが決定。仲間が撮影や編集作業を引き受け、嘉征さんがユーチューバーにチャレンジすることになった。

嘉征さん

地元の漁師として 漁師ユーチューバー として須崎の海に出る

 それから嘉征さんたちは、YouTubeにさまざまな動画をアップ。須崎湾の海中を泳ぐ素潜り漁の様子はもちろん、シラス漁の現場や、高級魚のセリの光景、さらには漁船の値段まで…、漁師でなければ見ることができないような動画の数々が再生回数を伸ばしている。なかでも「獲れたてのシラスで漁師飯!」の動画は、なんと再生回数が270万回を突破。有名なユーチューバーから「1万再生いったらすごい」と言われたYouTubeの世界で、驚くほどの注目を集めることができた。  

嘉征さん

 「地元の友達に撮影してもらっていることが、一番良いんだと思います」と嘉征さん。最初こそぎこちなく、どこか演じるように動画に出ていたが、今は飾らない普段の土佐弁。自然体で、まるで友達と遊びながら撮影をしているよう。それが、若い視聴者の親近感につながっているのだ。「地元で動画を見てくれている人も多くて、街に出たら『あ、ユーチューバーだ』とよく言われます。ただの漁師だったら絶対に知り合うことがなかったような、いろいろな人たちにも声をかけてもらえて。本当に嬉しいですね」。  

 今後の目標に、登録者数10万人を掲げる嘉征さん。地元・須崎の海の暮らしを伝えるため、地元の漁師として、ユーチューバーとして、これからも活動を続けていく。

嘉征さん

エフエム高知で毎週金曜日に放送中の「プライムトーク」に出演した時の嘉征さん。嘉征さんの出演回は、令和4年12月30日、令和5年1月6日の2週にわたってオンエア。