「ご当地漫画家」に聞いた高知で描くワケ

高知在住の漫画家たちは、なぜ地元で仕事をするのだろう? それは作品にも影響している? 漫画家を訪ねて、教えてもらった。

創作活動の拠点は 暮らしやすい場所に

『ケイリン野郎』や『ヘルプマン!』などのヒット作を世に送り出してきた漫画家、くさか里樹先生。昭和55年のデビュー以来、執筆の拠点は、ずっと変わらず地元・高知県。

今も昔も、香美市内にある行きつけの喫茶店でネームを描いている。高知を離れない理由について、くさか先生は、「創作活動と普段の暮らし、どちらも大事にしたかったから」と話す。

ペン

まんがは創作の世界だが、集中してまんがを描く仕事場から外に出れば、普段の暮らしがあって、そこは心地よい場所であってほしい。創作活動という「非日常」と、暮らしという「日常」を繰り返すほど、自分自身が精神的に健康であることが大事だと、くさか先生は感じた。

「まんがはあくまで自分の一部にすぎません。私は、母親でもあるし、今では地域のおばちゃんです。ここが生きやすい場所だからこそ、高知にいるんですよ」。

メイン
香美市にある仕事場兼自宅にて。デビュー以来、ここで作品を描き続けている。

作風のベースにあるのは 受容性に富む県民気質

「漫画家になる前は、福祉施設で働いていた」と言うくさか先生。そんな当時の経験から、「高知の元気な高齢者が、現代の『生と死』の概念を痛快に笑い飛ばす」というイメージが頭に浮かび、それが代表作『ヘルプマン!』のテーマになった。

くさか先生は自身の作風について、「勧善懲悪の物語ではなく、『どんな人も分かり合える』という思いがベースになっています。それってたぶん、高知の人の影響なんですよね」と話す。

「『高知家』って言葉があるように、高知県民には、誰かの良いところも悪いところも受け入れてくれる、家族みたいな人が多い。それが、いい意味で呑気というか、まんがっぽいというか。長く住んでいて、改めてそう思える」。

近年、くさか先生は「まんが甲子園」の審査員を務めるようにもなり、毎年夏になると「高校ペン児」たちが見せる若い感性に刺激を受けていると言う。

まんが甲子園

「高校生が仲間と必死になって感性を共有し、ペンを走らせる姿は本当に感動します。これからも、高知発のまんが文化を一緒に広げていきたい」と話してくれた。

人

自身の経験と高知の県民性を掛け合わせて誕生した『ヘルプマン!』は、第40回日本漫画家協会賞大賞を受賞。新シリーズ『ケアママ』や、『ケイリン野郎』なども人気作だ。

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