自然博物ミステリーハンター 「横倉山」

ハンターくんが、高知県の不思議な自然博物を探検! 相棒はカワウソのオッター。

 

今月の調査は... 越知町「横倉山」を行く!

化石、歴史ロマン、生き物…、様々な不思議を秘める「横倉山」。 底知れぬ神秘を宿したこの場所は、 はるか昔から現在に至るまで、人々の関心を惹き続ける。
安徳天皇陵墓参考地の森。神秘的な静けさのなかに、そこで生きる豊かな生き物たちの息吹を感じとることができる。森の奥には安徳天皇が眠るとされる神聖なお墓も。

今回案内してくれるのは…
越知町立 横倉山自然の森博物館 学芸員 博士(農学) 谷地森 秀二さん
宮城県出身。専門のタヌキをはじめ、生き物のスペシャリスト。いろいろな生き物の研究者を横倉山に呼び、その魅力を掘り起こしている。
横倉山の自然はもちろん、 歴史や伝説といった 魅力にもご注目を。

 

アカガシの原生林はなぜ残された? 安徳天皇の伝説が神秘の森を生む

ハンターくんが訪れたのは、仁淀川流域にある越知町の横倉山。「神秘の森」とも呼ばれ、地元住民はもちろん、県外にもファンが多いミステリーの宝庫だ。その最大の謎は、何といっても「安徳天皇陵墓参考地」。

源平合戦の終わり、長門壇ノ浦の戦いに敗れた平家一門と共に、幼くして海の底に沈んだと伝えられている安徳天皇が「実は生き残って横倉山にたどり着いた」という伝説があり、そのお墓とされる場所も、実際に宮内庁によって保護されている。

「不思議はそれだけじゃないよ、ハンターくん」と話すのは、横倉山自然の森博物館の学芸員の谷地森さん。「この森には全国的にも珍しいアカガシの原生林が残されていて、そこでは希少な生き物や、まだ名前が付いていない生き物、それに数々の珍しい生態が発見されているんだ」。

例えば、全国的にも珍しいことに、モモンガとムササビが横倉山では同じ木に巣を作っていることも確認されている。また、非常に希少なモリアブラコウモリが横倉山で発見されたことも、特異な謎になっているという。

多様な生き物を抱く原生林に不思議な感覚を覚えながら、やがてハンターくんの調査はひとつの仮説にたどり着いた。この豊かな原生林が切り開かれずそのままに残されたのは、「安徳天皇のお墓を守る」という人々の信心があったからではないだろうか。

事実、ほとんどの森が人工林に置き換わった今も、安徳天皇陵墓参考地の森は手付かずのまま、その姿を留めている。人々の信心こそが、横倉山の神秘を生んだのかもしれない。

10世紀前半に開拓された横倉山は、土佐国唯一の修験道場だったと伝えられている。

高知県内では数カ所しか見つかっていないニホンモモンガ。豊かな生態系の存在を示す。

横倉山の多様な生態系の根拠であるアカガシ。日陰や適度な湿気をつくりだし、豊かな生物が暮らせる環境を形成している。

地域に生きる 自然フシギ発見

「横倉山の化石」

「筆石」の化石

地質上の生い立ちにも大きな謎を秘めている横倉山。近年の研究によると、横倉山はおよそ4億年以上前に赤道付近で誕生し、ゆっくりと現在の位置まで移動してきたと考えられており、

日本で唯一、横倉山でのみ発見されている「筆石」の化石や、陸上植物「鱗木」の化石などが見つかっている。地球の歴史を紐解く鍵が横倉山に眠っているかもしれない。

横倉山の麓にたたずむ「横倉山自然の森博物館」では、発見されたことをヒントに、横倉山の自然を学ぶワークショップも開催している。もっと横倉山を知りたくなる、さまざまな展示もあるので、ぜひ訪れてみて。