土佐の技 温故知新【陶芸】 「新田文江さん」

地域に支えられ、受け継がれる穴窯

北川村を代表する陶芸品「こつも焼き」には、昔ながらの技の風合いはもちろん、土佐人らしい職人の生き方を垣間見ることができる。約半世紀前、地元出身の新田文江さんが、大学美術科在学中に出会った陶芸を「派閥や常識にとらわれず、より自分らしくやりたい」と考えたことが、こつも焼きの始まり。有名な工房にはあえて属さず、地元である木積(こつも)で自ら工房を構え、地域で採取された土を原料に作品づくりを開始。今では地域の田舎寿司の器として愛用されるなど、地元になくてはならないものに。工房の穴窯は、地元住民と一緒に作りあげたもの。近年では、京都の陶芸家や地元移住者たちが加わり、穴窯を次世代に継承していこうと盛り上がっている。

いろいろな参加者が作品を持ち寄り、5日間にもわたって火を燃やし続ける穴窯。薪の準備から皆で行っている。

こつも焼き 陶芸家/新田文江さん

昭和21年生まれ。地元の作陶グループ「炎会」を主催。こつも焼きを始めたほか、身体が不自由な人の自立・介護を目指す「らくらく食器」を考案。