土佐の名建築【ギャラリー】〜新たな使命を持ってリノベーション〜

贅を尽くした商家建築 今なお重厚感をもって 須崎の街角に健在

 酒造、製紙業、金融など、多岐に渡る事業を行い繁盛した須崎の有力商家・三浦商店。一面黒塗りの外壁が印象的な旧店舗部分は、木造二階建ての塗家造と高知県では代表的な商家建築だ。主屋には土佐特有の良質のヒノキ丸太、表門にはケヤキ材を使用するなど良材を多用、また西洋を感じさせるデザインを取り入れたりと、当時の最先端とされた。長らく空き家だった建物が再び息を吹き返したのは2010年のこと。須崎の様々な地域資源を活用し、須崎の魅力を知ってもらうための文化交流施設「すさきまちかどギャラリー」として活用されるように。

昭和初期に撮影された三浦商店。旧道交差点の角地に立ち、町の発展に大きく寄与した。(須崎市教育委員会提供)

企画展や地域の伝統文化を取り上げた展示、また新たな視点から須崎の魅力を探るためのプロジェクト「現代地方譚」を開催するなど、県内外から注目を集めている。2014年には大規模な改修が行われ、建物の修繕に加えて新たな設備も増設され、活用の幅に広がりを見せている。「地域の文化振興と歴史の掘り起こしの拠点となるように」と川鍋館長の言葉通り、須崎を支えてきた商家が今、別のかたちで地域を支える代表的な場所として健在している。


女性ならではの感性が光る 二度と真似できない ハイセンスデザイン

 1967年(昭和42年)に開館した「海のギャラリー」は、土佐清水市出身の画家・黒原和男が収集した、学術的価値の高い貝を含む約3千種類5万点を展示する世界的にも珍しい貝類展示館。設計したのは、女性建築家の故・林雅子で、それまで主に住宅設計を手がけていた彼女にとって初めての公共物であり、そして代表作となった。その特徴は随所に見られ、例えば巨大なコンクリート2枚をアクリルで接合した屋根。頂部は繋がっておらず、その間から差し込む光がスリット状のトップライトとなって館内に差し込み、まるで深海にいるような幻想的な雰囲気を演出。

他にも屏風折りのような折半構造や、片持ち梁で支えられた階段など、特徴を挙げればキリがなく「今造ろうと思っても再現できないほどすごい造り」と同業者も舌を巻くほど。竣工後数十年は改築・改修などされておらず老朽化による存続の危機に見舞われたが、夫だった建築家の故・林昌二や、地元建築家たちの働きかけで1993年に改修工事を行い、再び観光名所として蘇り多くのファンを魅了し続けている。