土佐の酢みかん文化に新しい風を

四万十ぶしゅかん

 四万十市の中村地域において、長きにわたって愛されてきた「ぶしゅかん」。まろやかな酸味と独特な風味、さらに皮の香りの強さが特徴で、さまざまな料理や食材の調味料・薬味として楽しまれてきた。それは「地元の各家の庭先にはぶしゅかんの木があり、必要な分を採って使っている」というエピソードからもうかがい知れるが、実は果樹として栽培する農家はおらず、ほとんど流通もされていなかった。そこで「ぶしゅかんで地元を活性化しよう!」と、2010年頃より「四万十ぶしゅかん」という名前で果実のブランディングを開始。地元地域へのぶしゅかん作りの斡旋やマニュアル化、商品開発などを行いながら、現在では年間約30トンほどの出荷量を望めるまでになった。「耕作放棄地の解消や、栽培・搾汁・加工などによる雇用機会の拡大とともに、少しずつ地域の活性化にもつながっている。今後は100トンの生産量を目指して、全国での流通も行っていきたい!」と意気込む。

【Bu酎ハイシロップやポン酢などを用意】居酒屋などに卸されている酎ハイ用のシロップやポン酢、果汁など商品もさまざま。四万十屋の店頭などで購入可能。

 

直七

 広島県尾道市田熊の「田熊すだち」がルーツであり、魚商人の直七さんが「魚に掛けるとおいしい」と触れ回ったのをきっかけに「直七」という名前が付けられたという酢みかん。樹齢200年以上という直七の木が現存しており、その歴史は古いが、地元以外でその味わいや名前を知る人は少なかった。「直七を地元の特産品として売り出したい」と宿毛市からの要請を受け、2007年に約1000本のポン酢を試験的に販売したところ、これが思いのほか好評。それをきっかけに、生産組合の立ち上げや工場の整備などを行った。また、「あえて加工品の開発や製造、販売を行わず、メーカーに果汁を販売してそれらを一任することで、リスクやコストの削減を行った」のが功を奏し、「バランスが良くてどんなものにも合う」と、国内の有名メーカーがこぞって商品化。今ではその名が全国に浸透しつつある。今年度からは全国で玉の販売も行うことになっており、その勢いはとどまることを知らない!

【さまざまなメーカーが直七のアイテムを発表!】県内外のメーカーが、直七を使った商品を数多く開発・販売。商品のバリエーションが豊富なのも直七ならでは。

 

フルーツキャビア

 高知で栽培される酢みかんの中でも特に珍しい、オーストラリアが原産の「フルーツキャビア」。4~8cmほどの縦長の果実には魚卵のように丸い粒状の果肉が詰まっており、近年は有名レストランなどが料理やドリンクの添え物として使うことで話題を呼び始めている。だが、白木さんが栽培を始めた2012年頃は全国でも数えるほどの場所でしか作られていなかったという。「苗木を仕入れるのもひと苦労で、やっとの思いで仕入れても、疫病に弱いため枯らしてしまったものも多いです」。そんな苦い経験などを経て、実がなり始めたのが2016年頃。今では約15種類、100本以上の樹を栽培しており、東京や大阪のレストランなどに卸したり、HPで個人向けの販売も行っている。「いまだに手探りを続けながら育てている不思議な柑橘。もっと安定した供給ができるように対策や環境を整えて、いつしか高知育ちのフルーツキャビアが全国を席巻するよう頑張っています」。

【お寿司にも好相性!色んな組み合わせを】噛むと柔らかい酸味と香りが広がる果実。スーパーのお寿司にのせれば、ワンランク上の味わいが楽しめる。

土佐ベルガモット

 南イタリア原産で、アールグレイの着香やオーデコロンの原料となる「ベルガモット」。今も世界で生産される90%がイタリア産で、高知発の「土佐ベルガモット」が誕生するまで、日本ではほとんど栽培されていなかったという。「もともとウチで採れた青切りみかんについて小林さんに相談しようとしたところ、『ベルガモットを育ててみないか?』と打診された」と西込さん。「どこにもない柑橘」×「どこにもない製法」の商品を開発すべく、2008年から高知でのベルガモット栽培が始まった。気温の調整や台木の選定など長きにわたって研究すること5年。初めて収穫できたのは2014年だった。当初はハウスでの栽培だったが、現在は山を切り開いた露地での栽培を行っており生産数も安定。香りを生かしたさまざまな商品は、現在首都圏の百貨店などで販売され、好評を呼んでいる。「目指すは世界最高品質のベルガモット。有名ブランドの香水の原料に使ってもらいたい!」。

【ベルガモットの香り広がるスパークリング】日本初の国産ベルガモットを使ったノンアルコールスパークリング。はるのTERRACEのHPから購入できる。