酒蔵の ルーキーが語る未来「海外にもモテる!」

今や世界的評価も高い日本酒だが、 その中でも土佐酒の存在感はトップクラス。 海外に向けて羽ばたく蔵元のルーキーらが 語る未来予想図とは…?

海外コンクールの影響力は 土佐酒を改めて国内へ発信する最大の武器

 昨年の「SAKE COMPETI TION 純米吟醸部門」で第1位、「IWC」と呼ばれる世界的ワインコンクール「SAKE部門」において今年ゴールドメダルを受賞。香港やシンガポールなどアジアへの輸出を伸ばす「仙頭酒造場」のモットーは、手間暇を惜しまず造りのほとんどを手作業で行うこと。最近では、ワイン界で話題の自然派ワイン「ヴァンナチュール」の本場・フランスのワイナリーを訪問。同じ醸造酒としてその土地の自然を最大限に活かした造りに共感し、代表銘柄「土佐しらぎく」の「ナチュール」を発表するなど、独自のこだわりを表現した。そして今、土佐酒ファンをワクワクさせているのが、今年開発されたばかりの酒造好適米「高育酒80号」で試験醸造されているお酒。県内の蔵元を代表して「仙頭酒造場」が第一号に着手し2019年1月に完成予定で、すでに海外輸出も予定。耐久性を持たせるようオリジナル設備を導入することで長期輸送の難点をクリアしている。

目指すのは アウトバウンドから インバウンドへ

年に数カ国を訪問営業し、信頼を置く現地の飲食店で開催する「美丈夫とのフードペアリングイベント」には舌の肥えた若い世代が殺到。
写真は2018年9月ロンドンの様子。

 創業明治37年、国の登録有形文化財(建造物)に指定される蔵で「美丈夫」を醸す濵川商店は、現在、フランスやイギリス、シンガポールなど13カ国へ輸出。繊細な品質管理を重要視される日本酒は、もともと海外輸出自体が難しいとされていた。しかし濵川商店では、信頼を置ける現地インポーターやパートナー企業のサポートを受け、現地の流通をしっかり確認。さらに、冷蔵コンテナなどを用いることで高い品質をそのまま海外に届けることに成功している。そして、海外でのレストラン営業や酒セミナーを地道に重ねることで認知度はアップし、若い世代を中心に人気が沸騰。2018年には「全米日本酒歓評会」でゴールドを3つ、フランスで開催の「Kura Master」でプラチナ賞など多数受賞。食とのマリアージュ(相性)に高い評価が集まる土佐酒の中でも世界に名だたる地位を確立しつつある。「海外市場をいずれはインバウンドへ繋げることが目的。現地のお客様は、銘柄や味の違いをしっかりと理解して飲んでます」と川村さんは言う。高知県人も負けてはいられない。

海の向こうでも「土佐を体感」してほしい 受け継いだ伝統を、世界へ繋げ

世界の各地域で商談会やプロモーションイベントを開催。淡麗辛口で幅広い料理に合う土佐酒は、美食の町でも評価が高い。

 地元・高知の素材を使用した土佐の魅力満点の「土佐体感地酒の醸造」をコンセプトに、130年余に渡って香南市赤岡町の中心で地酒を醸してきた「高木酒造」。「豊能梅」の名で守られてきた伝統は、2017年、6代目蔵元として就任した高木一歩さんへと引き継がれた。全米日本酒歓評会にてゴールドを受賞するなど既に海外でも高い評価を成し遂げた先代のバトンを受け取り、「豊能梅」の存在をより広く知ってもらおうと、県内の蔵元と協力しながら海外でもイベントを開催。地元・赤岡にも、酒蔵見学に訪れる外国人観光客が少しずつ増えている。「日本酒特有の香りに慣れていない彼らだからこそ、単純に好き嫌いで判断してもらうのではなく、オススメの食べ合わせをプレゼンするなどして、細かい魅力を伝えられるように心がけています」と海外PRに向けた想いを語る6代目。海の向こうでも「土佐の魅力を体感」してもらうべく、若き蔵元の挑戦は続く。