近年「仁淀ブルー」の名で呼ばれ、注目を集める仁淀川。 その上流域に、多くの人達の興味をひきつける「水晶淵」がある。 地元の人でもあまり足を踏み入れなかった「新スポット」。 その人気の秘密は、「自然と触れ合える」という原点にあった。

「仁淀ブルー」は、ただ見るだけではなく、体験する場所。
泳いだり、BBQをしたり、写真を撮ったりして、自然と触れ合って。

 落差15メートルはあるだろうコンクリート造りの砂防ダムから、美しい清流が流れ落ち、たたえられる青い滝つぼ。抜群の透明度、独特の青色に、近年「仁淀ブルー」と呼ばれ全国的にも注目を集める、仁淀川の「安居渓谷県立自然公園」内に、「水晶淵」はある。仁淀川の自然と触れ合える場所として整備された自然公園には、全国的にもなかなか見られない構成の結晶片岩など、渓流以外にも見所がたくさん。斜面地にはモミジやカエデが植えられ、秋になると抜群の紅葉スポットとして、多くの人を和ませてくれる。  


ここ水晶淵もまた、90年代に砂防事業のひとつとして整備された人工ダム。それまでは人が立ち入る場所ではなかった。「地元の人でも来る人はそんなにおらんかったね。見るべき場所として扱われてなかったのか、そこまで行ける歩道も整備されてなかった。そのぶん、水は怖いばあきれいで。大雨で増水しても濁らんかった」。そう語るのは、水晶淵がある安居渓谷で「宝来荘」を営む筒井真二さん。長年、仁淀川を訪れる観光客を愉快な人柄でもてなしてきた。もちろん「水晶淵」が知られるようになった経緯にも詳しい。そもそも、仁淀川の美しさを広めたのは、写真家・高橋宣之先生の作品。「高橋先生の作品で火がついてからはウェブサイトやSNSを通して知った若者たちが来るようになってね」。 「仁淀ブルー」という言葉が出回り始めると、人の流れが一変した。「ただ見るだけではなく、こんなにきれいな水に入れるなんて。泳いだり、BBQをしたりして、遊べるなんて」。

地元の住民にとっては当たり前に目にしてきた風景も、街中で暮らす人達には希少価値が高い。そんな風景が高知県には数知れず存在する。あくまで水晶淵は、そのひとつ。夏も終わり秋、青く澄み切ったここには、その絶景をカメラに収めようと若者やカップルらが訪れる。