高知の薬味の底力「ショウガ」

キラリ、そして「ピリリ」と放つ存在感 高知の食文化に欠かせない 辛くて香り高い「薬味」の数々 歴史、産地、そしてその薬味を使った料理のこと もっと知りたくありませんか?

▶︎高知のショウガ栽培発祥の地といわれるいの町産の大生姜。大きな塊根が連なった見た目が印象的で、辛味と香りが強いのが特徴。

▶︎熱帯アジアを原産地とするショウガは、高温多湿な環境を好む。日差しが強く雨も多い高知県は栽培場所に最適だ。 

▶︎ミネラルが豊富な赤土で育てるのが、いの町での伝統的なショウガ作り。平地や山合いにショウガ畑が形成され、収穫前の畑からはショウガの爽やかな香りが漂う。

ショウガの慣行栽培と並行して「有機栽培生姜」も手がけるいの町の刈谷農園。太陽や土、水、そこに生きる微生物など自然の恵みを受けて一つ一つ丁寧に育てている。 

高知の万能薬味 ショウガ栽培発祥の歴史

薬味大国の高知県において、最もポピュラーな薬味「ショウガ」。県内全域で栽培が盛んな高知県のショウガの生産量は全国トップで、高知の食・産業ともに、今やなくてはならない存在だ。そんなショウガが高知に伝わったのは大正5年のこと。いの町出身の深田駒次(ふかた こまじ)氏が、「大生姜」(おおしょうが)の苗を取り入れたことに始まる。ショウガが流通し始めると、ショウガ独特の「ピリっとした辛さと、清涼な香り」に多くの県民が魅了された。特に暑い 時期の食事の薬味として好まれるようになり、栽培条件も高知の気候に適していたことから、いの町を中心に、その生産域を拡大していったそうだ。

収穫直後の大生姜は、綺麗に水洗いすることで光沢を放つ。基本的には切り分けて販売されるが、日曜市などではこのままの姿で陳列することも多い。

刈谷農園と地元スーパー「サンシャイン」がコラボした商品群。地元産のフレッシュでピリっとしたショウガを、さまざまな形で気軽に味わえると人気を博している。

ショウガの町の パンチの効いた展開

高知のショウガ栽培発祥の地といわれるだけあって、いの町のショウガに対する意識は高い。町内ではグルメな町おこし「いの生姜焼き街道」を筆頭に、農家と地元スーパーがコラボした商品開発、町内のお菓子屋さんによる地元のショウガパウダーを使ったシフォンケーキやクッキーの販売がスタートするなど、面白い展開が進んでいる。中でも、三世代にわたっていの町でショウガ栽培を続けてきた刈谷さんが育てる「有機栽培生姜」は、今日のショウガムーブの足掛かりとなった。本来、ショウガは農薬を使用しないと栽培は難しいとされてきたが、試行錯誤の末に生まれた刈谷さんの有機栽培生姜は、ショウガの清涼感と、パンチの効いた辛さが両立しており、一般的な栽培方法で作られたショウガには真似できない強烈な個性を持っている。刈谷さんはこれまで、自らが育てたショウガを使って、積極的な販路拡大や、高知県産ショウガの認知度向上に努めてきた。今年10月にはパリで行われる見本市「SIAL Paris(シアル・パリ)」に、ショウガを出品予定とのことで、「海外のお客さんを、いの町のショウガでびっくりさせたい!」と意気込みを語ってくれた。

「森の小さなお菓子屋さん(道の駅633美の里内)」で販売中のショウガスイーツ。甘さを控えたシンプルな味わいの中に、ショウガの風味をしっかりと感じる。