300種類の生地からひな人形ができるまで 「世界でたった一つのひな人形」

女児の無病息災を願って桃の節句に飾るひな人形。 そんな日本古来の習わしを重んじ、三世代にわたって 昔ながらの製法で一つ一つ手作りするひな人形工房を訪ねた。

素材選びからお客さまに寄り添い、
工程一つ一つに思いを込める

「お祖母さまの形見の着物帯を使ってひな人形を作る方もいらっしゃるんですよ」、そう言って工房を案内してくれたのは「アオイコーポレーション」の代表・楠目和子さん。昭和43年に「葵人形」として創業。代々家業として行ってきたひな人形作りを継承し、現在は同社の人形事業部で、2人の職人と共に、ひな人形作りの伝統を守り続ける。工房に並ぶのは、西陣織の金襴などをはじめとする、300種類以上に上る色とりどりの生地。その中から、好みの色・柄・素材を選んで自分だけのオリジナルひな人形を作ってくれる全国でも数少ない工房。色とりどりの十二単を着たおひなさまともなると、選ぶ生地や小物も十人十色で、出来上がった人形は一つ一つが個性的。「自分が選んで作ったおひなさまが一番。そう言って喜んでくれるんですよ」と楠目さんは頬を緩める。  今では大量生産による機械化が進むひな人形作りだが、ここでは、ワラや木毛(もくめん)、針金を使って胴体や手足を作るところから始まり、何十種類ものパーツを裁断し縫製して組み合わせていくという、気の遠くなるような作業が職人の手によって進む。「無病息災を願ってひな人形を飾る」という元来の意味を大切にするからこそ、代々引き継がれた昔ながらの製法にこだわり続けている。

アオイコー-メイン写真
アオイコーポレーションの代表・楠目和子さんと、この道25年のひな人形職人・中田佐由利さん。新作となる真っ赤な衣装の「還暦雛」と共に。「60歳の還暦に無病息災を願う還暦雛を作ってみました」と自信作を披露してくれた。

ひな人形ができるまで①
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