高知の薬味の底力「ぶしゅかん」

キラリ、そして「ピリリ」と放つ存在感 高知の食文化に欠かせない 辛くて香り高い「薬味」の数々 歴史、産地、そしてその薬味を使った料理のこと もっと知りたくありませんか?

定植からの育成期間は5〜6年。若木の頃は寒さに弱いため、木が一定の大きさになるまでは毎年霜よけを行い、大事に育てられる。

四万十で育まれた 酢みかん界の有望株!

 「ぶしゅかん」は、四万十市を中心に高知県西部の沿岸部に分布する柑橘類。柚子やスダチに並ぶ「酢みかん」の一種で、キレの良いスッキリとした酸味と独特の上品な香りが特徴だ。

特に夏季に捕れる新子(しんこ ※宗田鰹の若魚)との相性が抜群に良く、シーズンには県内のスーパーなどでも気軽に購入できる、県民にも馴染みのある薬味だ。一方で、ぶしゅかんの「果樹」としての本格的な栽培が行われるようになったのは、近年になってからのことで、現在のようにブランド化・名産品化されるまでには、長い道のりがあった。

ぶしゅかんの収穫は8月下旬から。中でも、皮の緑が濃く酸味と香りが強い「青玉」は、収穫期間が約1ヶ月と短い。

庭先の果実が 「土佐の薬味」になるまで

 元々、ぶしゅかんは四万十市の各家庭が庭先で育て個人的に消費を楽しむような存在であった。そのため、ブランド化の構想段階で専門的にぶしゅかんを栽培する農家は0戸。このような状況から、組合長の伊与田さんを筆頭に、補助金なども活用しながら、時間をかけて協力農家を募っていったそうだ。

ポン酢にシロップ、ドリンクにお酒まで、ぶしゅかんの搾汁を使って生まれた商品たち。

やがて、加工業者なども加わり「チームぶしゅかん事業」が本格的に動き出したのが平成22年のこと。耕作放棄地への1000本のぶしゅかん定植、果汁と皮を利用した商品開発など、その活動はどんどん拡大し、ぶしゅかんはその魅力と名前を世に広めていった。

四万十市では昔から焼酎にぶしゅかんが定番で、現在、四万十市の居酒屋では「ぶ酎ハイ」がブレイク中。

全国に広がる ぶしゅかんの魅力

高知県内では生カツオや焼き魚の薬味としての利用が主流だが、流通が広がった現在、東京のイタリアン店などでは、ぶしゅかんの香りを生かしたカルパッチョなども登場しており、「他の柑橘では出せない味」とシェフからも注目を集めている。

一方、四万十市内の洋菓子店では「ぶしゅかんのタルト」が販売されていたり、学校給食にもぶしゅかんが使われたりと、楽しみ方もそれぞれで、ぶしゅかんの産地らしい面白い展開も始まっている。